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経営権の譲渡とは?経営者向けに支配権との違いや承継方法を徹底解説

✔当記事はこのような方に向けて書かれています

「経営権の譲渡って何?」

「経営権と支配権って何が違うの?」

「経営権の承継方法が知りたい」

✔当記事を通じてお伝えすること

  • 経営権とは
  • 支配権とは
  • 経営権譲渡について

当記事では、経営権とはなにかについてはもちろん、支配権との違いや株式譲渡などの具体的な方法を解説しています。

ぜひ最後までご覧ください。

経営権の譲渡で知っておくべきこと3選

はじめに、経営権の譲渡で知っておくべきことを解説します。

経営権の譲渡を検討するうえで一般的な定義を理解する必要があるからです。

  • 経営権とは?
  • 経営権の譲渡とは?
  • 経営権を譲渡するときの一般的な方法

経営権とは?

経営権とは、会社を経営する権利のことです。

発行済株式の過半数を所有していれば、会社の経営権があるとみなされます。

例えば、取締役・監査役の選任や取締役の報酬など、普通決議で決められる項目であれば、経営権のある人が単独で決議できます。

株式の所有割合が大きいほど、会社への影響力も大きくなるのです。

経営権の譲渡とは?

経営権の譲渡とは、経営権を第三者に譲ることです。

過半数以上の株式を譲渡することで、普通決議での決定権を持てるようになります。

株式を譲渡することで、会社が所有する資産や従業員などの経営資源もそのまま買い手に引き継がれます。

経営権を譲渡するときの一般的な方法

一般的に、経営権の譲渡は株式譲渡によっておこなわれます。

過半数以上の株式を取得できれば、実質的に会社の経営権を得られるからです。

株式譲渡では、株主が所有する株式を第三者に譲渡し、その対価として買い手が資金を支払います。

実際の手続きとしては、株式譲渡契約書の作成や株主名簿の書き換えなどがあげられます。

他のM&Aの手法と異なり、会社はそのまま存続できるため、手続きが煩雑にならない点がメリットです。

株式所有割合別の支配権

次に株式所有権割合ごとの支配権について解説します。

支配権とは会社を実質的に支配する権利のことです。

所有する株式の比率に応じて、会社に対して行使できる権限が異なります

  • 総議決権の過半数を保有している場合
  • 総議決権の2/3以上を保有している場合
  • 1株だけ保有している場合

総議決権の過半数を保有している場合

総議決権の過半数を保有する株主は、支配株主と呼ばれ、株主総会の普通決議であれば、自分だけの判断で行えます。

普通決議の成立では、総議決権の過半数以上の同意が必要とされているからです。

普通決議の項目の例は、以下の通りです。

  • 決算の承認
  • 取締役・監査役の選任
  • 取締役・会計監査人の解任
  • 取締役の報酬の決定

総議決権の2/3以上を保有している場合

総議決権の2/3以上を保有している場合は、会社に対する支配権がさらに強くなります。

株主総会の特別決議も自分の意思で行えるので、会社にとってより重要なことを単独で決められます。

特別決議の成立においては、総議決権の2/3以上の同意が必要です。

特別決議の例として、以下の項目があげられます。

  • 事業譲渡の承認
  • 定款の変更
  • 監査役の解任
  • 合併や株式移転などの承認

1株だけ保有している場合

1株だけ保有している場合は、会社で何かを決定できる権限はないと考えられます。

総議決権の過半数を有していないため、自分ひとりの判断では経営に関する事項を決められないからです。

しかし、1株だけ保有している場合でも、株主としてできることがあります。

できることの具体例は、以下の通りです。

  • 株主総会で決議に参加できる
  • 会社に株式の買取を請求できる
  • 取締役会を招集できる
  • 株主総会議事録の閲覧を請求できる
  • 株式の発行停止を請求できる
  • 株主総会で議案を提出できる

株式の保有割合によって、会社に対してできることが異なってくるのです。

経営権譲渡と区別すべき用語3種とその違い

次に、経営権譲渡と区別すべき用語3種について解説します。

それぞれの違いを把握しておくと、自社にとってどの手法が最適かを判断できるからです。

  • 事業譲渡とは?
  • 業務提携とは?
  • 資本提携とは?

事業譲渡とは?

事業譲渡とは、会社の事業の一部または全部を第三者に譲渡することです。

当事者間の契約により、譲渡する事業や資産の範囲を指定できる特徴があります。

経営権譲渡は会社のすべての事業や資産を譲渡するのに対し、事業譲渡は自社に経営権を残したまま、残したい事業と手放す事業を取捨選択できる点が異なります。

業務提携とは?

業務提携とは、特定の事業で複数の会社が協力しあう契約を結ぶことです。

協力しあう会社がそれぞれ独立したまま、事業に必要な資源やノウハウを共有する特徴があります。

経営権譲渡との違いは、経営権を譲渡せずに他社と必要な範囲で協力関係を築ける点です。

新しい事業に進出する際のリスクを減らせる、状況に応じて業務提携を解消できるなどのメリットがあります。

資本提携とは?

資本提携とは、会社同士が業務と資本の両方で提携する方法です。

出資する側が出資される側の株式を取得することで、資本面でも協力関係を築きます。

ただし、出資範囲をお互いに経営権を取得しない程度に留める点で、経営権譲渡とは経営権に及ぼす影響が異なります。

資本提携のメリットは、資本面でも提携して強い協力関係ができたり、出資を受ける会社の業績が改善できたりする点です。

経営権譲渡における2種類の契約

次に、経営権譲渡における契約について解説します。

経営権譲渡を実行するにあたって、トラブルを回避するためにも、契約書は大変重要な意味をもつからです。

経営権譲渡における契約は以下の2種類です。

  • 株式譲渡の契約
  • 株式交換の契約

株式譲渡の契約

株式譲渡の契約とは、株式を譲渡するために、売り手と買い手の間で結ぶ契約です。

両者が合意したうえで、株式を譲渡する際の条件や、代金の支払い方法などが契約書に記載されます。

譲渡する株式の比率を両者で話し合って決められ、株式を譲渡する対価が支払われる特徴があります。

具体的な手順は以下の通りです。

  • 譲渡承認の契約手続き
  • 取締役会・株主総会での承認
  • 決定内容の通知
  • 株式譲渡契約の締結
  • 株主名後の書き換え、証明書の交付
  • 決済手続き

また、譲渡益に税金がかかるため、納税準備も必要です。

譲渡価格から取得費を差し引いた金額に対して課税されるので、あらかじめ目安となる金額を確認しておきましょう。

株式交換の契約

株式交換の契約とは、会社同士の株式を交換する際に結ぶ契約です。

買い手が売り手の発行済株式をすべて取得し、買い手が株式を取得した対価として自社の株式を譲渡します。

株式譲渡との違いは、買い手が売り手の経営権を取得し、親会社と子会社の関係になる点です。

手続きは以下の手順で行われます。

  • 取締役会の決議
  • 株式交換契約の締結
  • 事前開示書類の備置
  • 株主総会にて株式交換契約の承認
  • 債権者保護手続き・株券提供公告
  • 反対株主からの株式買取請求
  • 臨時報告書・有価証券届出書・有価証券通知書の開示
  • 株券・新株予約権の証券提出
  • 株式交換の効力発生
  • 新株発行・設立・変更の登記
  • 公正取引委員会への手続き
  • 事後開示書類の備置・開示

なお、効力発生日から6カ月以内であれば、株主や債権者、取締役は株式交換の無効を訴えることができます。

また、株式交換では税金の優遇措置があり、要件を満たす場合は税金がかからない場合があります。

株式譲渡における4つの注意点

最後に、株主譲渡における注意点について解説します。

  • 発行済株式の総数を把握
  • 株主の把握
  • 株主譲渡制限の有無
  • 敵対的買収

発行済株式の総数を把握

発行済株式の総数を把握しましょう。

なぜなら、全体の何割持つかによって、持てる権限が異なるからです。

調べる書類としては以下のようなものがあります。

  • 登記簿謄本
  • 定款
  • 税務申告書

株主の把握

株主を把握しておくことも大切です。

とくに100%の株式を取得するのであれば、必ず必要になってきます。

調べる方法として一般的なのは、株主名簿を確認すること。

株主名簿とは、会社設立の際に代表取締役が作成し、法務局へ提出するものです。

設立時には提出が求められないケースもあり、手元にない場合でも、作成して置いておく必要があります。

株主名簿には以下の項目を確認しましょう。

  • 株主の氏名(法人の名称)と住所
  • 株主が保有する株式数
  • 株式の取得年月日
  • 株券を発行している場合の番号

株式譲渡制限の有無

株式譲渡制限の有無を確認することも重要です。

譲渡制限株式とは、株式を信頼できる第三者に譲渡するために、譲渡時に会社の承認を必要とする株式のことです。

株式を譲渡する株主からの譲渡請求に基づき、取締役会を開催して譲渡の承認・不承認を決定します。

会社法では、請求されてから2週間以内に承認の可否を通知すると定められています。

譲渡制限が付いている場合は、承認手続きを考慮し、余裕をもってスケジュールを組むと安心です。

敵対的買収

非上場会社でも、敵対的買収を仕掛けられるリスクがあります。

敵対的買収とは、対象の会社から同意を得ることなく買収を行うことです。

例えば、同族企業で親族間で広く株式を保有している場合は、親族間で仲が悪くなると経営権を巡って争いが起こることもあり得ます。

代々引き継いできた会社を円満に承継していくためにも、株式はできる限り分散させずに経営者に集中させることが望ましいです。

株式譲渡4つの手順

株式譲渡は以下の手順でおこないます。

  • 株式の譲渡請求
  • 承認期間の決議
  • 株式譲渡契約の締結
  • 株主名簿の書き換え

詳しい方法については以下の記事をご覧ください。

事業承継における株式譲渡の重要性|株式譲渡3つの方法やその手順を解説

まとめ:経営権の譲渡を考えるなら、どのくらいの株式を誰に渡すかをしっかり考えよう

当記事の内容をまとめます。

  • 経営権とは、一定以上の株式を保有し、会社に関する重要な決定ができる権利のこと
  • 支配権とは、会社を実質的に支配する権利のこと
  • 経営権譲渡は、株式の譲渡を一定の割合でおこなうこと。

経営権の譲渡とは、第三者に株式を譲渡して経営権を引き継ぐことです。

会社に対する支配権の強さは、総議決権に対する所有割合によって異なります。

本記事では、経営権を譲渡する方法のうち、株式譲渡と株式交換について解説しました。

経営権を譲渡する際は、事業譲渡・業務提携・資本提携との違いやそれぞれのメリット・デメリットを比較したうえで、自社に合った方法をじっくり検討する必要があります。

また、株式譲渡を行う場合は、株主の把握や、譲渡制限株式の有無、敵対的買収にも注意しましょう。

いずれの方法を活用する場合でも、専門的知識が必要となるため、実務上の手続きは専門家に相談しながら行うことをおすすめします。