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事業価値・企業価値とは?違いや算出方法、高め方までわかりやすく解説

✔当記事はこのような方に向けて書かれています

「事業価値を上げたい」

「事業価値と企業価値にはどんな違いがあるの?」

「会社の価値を高めるにはどうしたら良いか教えてほしい」

✔当記事を通じてお伝えすること

  • 事業価値とは?
  • 企業価値の重要性
  • 企業価値の算出方法
  • 企業価値を高めるためにできること

当記事では、事業価値についてはもちろん、売却などで大切な企業価値についてその算出方法や高め方を解説しています。

ぜひ最後までご覧ください。

事業価値についての基礎知識

事業価値の基礎知識として、言葉の違いを理解する必要があります。

「企業価値」や「株主価値」など、類似の言葉が多くて混乱しやすいからです。

  • 事業価値とは?
  • 企業価値とは?
  • 株主価値とは?

事業価値とは?

事業価値は、企業が活動する事業によって生み出される価値を金額で表した数値です。

事業活動の利益だけでなく負債も含めて算出します。

算出方法は複数あり、DCF法や年倍法で計算するのが一般的です。

また、貸借対照表では見えない特許権や「のれん」などの無形資産も事業価値に含まれます。

ちなみに「のれん」とは企業のブランドやノウハウなど無形資産の1つです。

企業価値とは?

企業価値は、企業の総合的な価値を金額で表した数値です。

企業全体の評価となるため、前述した事業価値は企業価値の一部に含まれます。

具体的な数値は以下の計算式で算出が可能です。

計算式:企業価値=事業価値 + 非事業価値

なお、非事業価値は、事業に直接関係しない株式などを指します。

株主価値とは?

株主価値とは、株主に与えられる価値を金額で表した数値です。

株主価値は、「企業価値-有利子負債」で算出できます。

有利子負債は返済金や利息を意味します。

株主は企業の利益によって配当金が得られますが、利益の全てを与えられるわけではありません。

事業を営むうえでは借入れなどの融資が必要になるからです。

融資には利息が付くため、返済や利息を差引いた利益を元に配当金が与えられます。

会社の売却なら事業価値よりも企業価値に着目

会社の売却時には事業価値よりも企業価値に着目する必要があります。

売却には経営環境や社会情勢が影響するからです。

企業価値には非事業価値が含まれるため、以下のようなことで変化します。

  • 株式の変動
  • 社会情勢の変化
  • 社会的需要

事業価値だけを見ていたら、影響の度合いが低く、正しい価値が見えてきません。

そのため、企業価値により注目する必要があるのです。

事業価値と企業価値との違い

事業価値と企業価値の違いは、非事業価値の有無にあります。

事業価値には非事業価値が含まれず、企業価値には非事業価値が含まれるからです。

事業価値は「事業単体の価値」、企業価値は「企業全体の価値」と覚えておくと良いでしょう。

開業したての企業などには、非事業価値がないため混同して使われるようです。

会社売却時に企業価値が重要な理由

会社売却時に企業価値が重要な理由は、企業価値が企業全体の価値を評価しているからです。

会社売却は、会社の事業だけではなく資産や負債などの全てを引き渡します

事業価値だけでは見えない非事業価値も計上しなければ、適切な売却価格が算出できません。

事業価値で売却価格を算出してしまうと、低価格となり大きな損失となってしまいます。

適正価格を算定するためにも企業価値を正しく算出しましょう。

企業価値を具体的に算出する3つの方法

こちらでは、企業価値を算出する3つの方法をご紹介していきます。

企業価値は算出方法によって結果が異なるからです。

  • コストアプローチ
  • インカムアプローチ
  • マーケットアプローチ

売買する双方で算出方法が異なるとトラブルになる可能性もあるので、考え方を統一しておくのが良いでしょう。

それぞれの考え方をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

コストアプローチ

コストアプローチとは、企業の目に見える情報を基に企業価値を算出する方法です。

目に見える情報とは、貸借対照表など財務諸表のことを指します。

具体的な資産の金額を見ながら計算できるため、最も簡単な計算方法ともいえるでしょう。

ただし、実際の金額で算出するため、将来的な利益などを含めない点はデメリットともいえます。

コストアプローチを基にした計算方法には、以下のようなものがあります。

  • 修正簿価純資産法
  • 時価純資産法

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、企業の将来的な利益やリスクを考慮して企業価値を算出する方法です。

将来的な利益や損失を予測して、期待される収益力を算出します。

M&Aなどの企業売買に最も多く使われている考え方です。

インカムアプローチの代表的な計算方法としては以下のとおり。

  • DCF法
  • 収益還元法
  • 配当還元法

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、同業他社や類似企業の市場価値を参考に企業価値を算出する方法です。

参考にする複数の企業を対象として、1株当たりの純利益や純資産倍率などを基に算出します。

市場を参考にするため、客観性が高く公平に判断できるのが最大のメリットです。

マーケットアプローチには以下の計算方法があります。

  • 市場株価法
  • 類似会社比較法
  • 類似取引比較法

企業価値が高いことで得られるメリット3つ

次に、企業価値が高いことによる3つのメリットをご紹介します。

メリットを知ることで、更なる企業価値向上につながる相乗効果も期待できるからです。

  • 社会的な評価が上がる
  • 融資が受けやすくなる
  • 会社売却時の価格が上がる

社会的な評価が上がる

企業価値が上がることは、社会的な評価が上がることを意味します。

なぜなら企業価値の高さは、安定的な収益や健全な企業運営の結果だから。

顧客や取引先にとって、安心できる指標といえます。

利用者増加や取引の優位性は、今後の企業運営に関わる大きなメリットです。

融資が受けやすくなる

融資が受けやすいことも、企業価値が高まるメリットといえます。

なぜ融資が受けやすくなるかというと、金融機関は企業価値を詳細に評価し、融資の可否を判断するからです。

融資を受けられることにより、さまざまなリスクが回避できます。

融資が受けやすくなることは、企業価値を高めておく理由ともいえる、大事なメリットです。

会社売却時の価格が上がる

売却時の価格上昇は、最も分かりやすいメリットといえます。

会社の売却価格は、企業価値をベースに算出され、直接的に影響を与えるからです。

アメリカのTwitter社は、2022年10月に約6.4兆円(同月換算)もの価値があるとして、買収が成立しました。

企業価値が高いということは、その分売却価格も上がるということなのです。

企業価値を高めるためにできる4つの方法

企業価値を高める方法をお伝えします。

意識しておこなえば、企業の価値を上げられるのです。

  • 売り上げアップ
  • 資産の整理
  • 財務体制を整える
  • 優秀な人材を確保する

売り上げアップ

売り上げアップは、最も基本的な方法です。

収益が見込める企業は、その分の価値を世の中に提供していることになります。

以下のような指標を元に、向上できるポイントを探ってみましょう。

  • 顧客リストはあるか(新規開拓)
  • 顧客のリピート率はどのくらいか(既存顧客)
  • 顧客単価は充分か
  • 差別化ができているか
  • 顧客からの紹介は出ているか

自社に適した戦略で、売り上げアップと企業価値向上を目指しましょう。

資産の整理

資産の整理とは、所有しているさまざまな資産を見直すことです。

見直すべき理由は以下のとおり。

  • 所有しているだけでコストがかかるものがある
  • 相場で時価が変動する資産がある
  • のれんのような無形資産が存在する

企業価値をあげるためには、現状をきちんと把握し、ロスを削減しなければなりません。

資産により、時価と決算書類上で計算が異なるものもあります。

必要に応じて、専門家に確認することも必要です。

財務体制を整える

財務体制を整えることで、企業の価値は高まります。

金融機関からの借入金や株主からの資本金を、どのようにコントロールし、経営に活かしていいるかを明確にするのです。

例えば借入金でも、返済が大変であると想像できる反面、経営に積極的であるという風にも見られます。

あくまでも、バランスが大切です。

主には以下のような手法で、財務の最適化をおこないます。

  • 財務レバレッジ
  • 負債の配分による節税効果

優秀な人材を確保する・育てる

優秀な人材は、企業価値も高めます。

なぜならどの企業でも、良い人材が大切だと認識しているから。

昨今は少子化の影響もあり人材確保が困難です。

人材が足りず事業を縮小しては企業価値の減少にもつながります。

優秀な人材が揃っていれば、事業継続の可能性もあがるため、企業価値の向上が期待できるでしょう。

まとめ:事業価値も大切だが、企業価値に注目すべき

当記事の内容をまとめます。

  • 事業価値とは、企業価値の一部
  • 売却においては、事業価値よりも企業価値に注目すべき
  • 企業価値を上げるためには、時間にゆとりをもって計画的に

もし企業全体としての価値を上げたいなら、企業価値に注目すべきです。

企業価値が高まれば、会社の売却時に高く買い取ってもらえます。

事業価値が低くては企業価値も下がってしまいますが、まずは企業全体の価値を考えてみることをおすすめします。