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親族内承継のメリット・デメリット|上手くいくコツや注意点を丁寧に解説

✔当記事はこのような方に向けて書かれています

「親族内承継って何のこと?」

「親族内承継のメリット・デメリットが知りたい」

「親族内承継の注意点や上手くいくコツはどんなものがあるんだろう?」

✔当記事を通じてお伝えすること

  • 親族内承継とは
  • 親族内承継のメリット・デメリット
  • 親族内承継の流れ

当記事では、親族内承継とは何かやそのメリット・デメリットだけでなく、うまくいくための流れや成功させる方法について解説していきます。

ぜひ最後までご覧ください。

親族内承継の定義

まずは親族内承継についての定義を見ていきましょう。

一言で親族内継承といっても、前提が違っていたら正しく理解できなくなってしまうからです。

  • 親族内承継とは?
  • 親族内承継以外の2つの事業承継方法とは?

親族内承継とは?

親族内承継とは、自分の子どもや孫などの親族に事業を引き継ぐ方法です。

中小企業では、今も親族内承継の割合が高いといます。

2021年度版「中小企業白書」によると、後継者のいる企業の承継方法のうち67.4%が親族内継承を予定。

さらにデータを見ていくと、以下のとおりです。

  • 創業者からの承継:77.2%が親族内継承を予定している
  • 先代経営者の親族からの承継:88.6%が親族内継承の予定している

この結果から、家族経営の会社で親族内継承の割合が高くなっていることがわかります。

(参照:2021年度版中小企業白書|中小企業庁)

親族内承継以外の2つの事業承継方法とは?

ここからは親族内承継以外の2つの事業承継方法をご紹介します。

別の方法を理解することで、それぞれの良し悪しが判断できるようになります。

  • 社内昇進
  • M&A

社内昇進

従業員を経営者に昇進させて事業を承継する方法です。

社内昇進のメリットは、経営者が会社の内情を理解している従業員を指名できることです。

経営者自身が従業員にアンケートを実施し、次期後継者として誰がふさわしいか選んだ珍しい事例もありました。(参照:2021年度版中小企業白書|中小企業庁)

M&A

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、外部の法人や個人が会社の株式を買い取り、経営を引き継ぐこと。

直訳すると「企業の合併と買収」という意味です。

M&Aの買い手を見つけるためにはマッチングをする必要があります。

後継者が親族内・会社内にいない場合や、現株主が売却益を得たい場合に活用される方法です。

親族内承継をするメリット3選

ここからは、親族内承継をするメリットをご紹介します。

親族内を承継するメリットがなければ、あえて親族に承継する恩恵が薄くなってしまいますね。

  • 準備を始めやすい
  • 税制で優遇される
  • 取引先や従業員の理解を得やすい

準備を始めやすい

親族内承継では、準備を始めやすいのがメリットといえます。

前もって親族から後継者を指名して育成することで、余裕を持って事業を引き継ぐことができます。

当然の話ですが、経営者にとって会社は資産です。

身近な存在である親族から後継者を選ぶことで、準備をしやすくなるのです。

税制で優遇される

親族内承継では、税制で優遇される可能性があります。

事業承継納税の特例措置を事前に受けることで、贈与税の納税が100%猶予されるのです。

贈与税や相続税が多額になることで、事業承継がなかなか進まないことも多くありました。

条件を満たせば、税金の負担を大きく軽減できます。

取引先や従業員の理解を得やすい

経営者の親族から後継者を選ぶ場合、取引先や従業員にあらかじめ伝えられます。

物騒な話ですが、経営者が病気になったとき、今後の会社の状況がわからないと残された人たちは不安になってしまいますね。

早いうちに後継者を決めて準備期間を設けることで、取引先や従業員に理解を得やすくなります。

親族内承継をするデメリット2選

親族内承継には当然デメリットもあります。

デメリットも理解しておかなければ、親族内承継を成功させるのは難しいです。

  • 親族間でのトラブルリスク
  • 個人保証リスク

親族間でのトラブルリスク

親族内事業承継には、親族間で揉めてしまうリスクが潜んでいます。

好意的な親族だけとは限らず、実例として、過度な自己主張をしてきたり、反対意見を押し付けてきたりされたことがありました。

とくに親族の間で充分な話し合いが行われていないとトラブルの火種になってしまいます。

親族それぞれが引き継ぐ資産にも影響してきますので、全体を見渡して、後継者がトラブルに巻き込まれないよう準備しておくことが必要です。

個人保証リスク

個人保証を引き継がなければいけないのも、親族内承継のデメリットといえます。

元経営者が負っていた責任をすべて引き受けることになるのです。

現経営者が保証人となることで成立している契約については、その立場を新経営者へ移すことが契約継続の条件となる場合がほとんど。

親族が事業継承を行う場合、個人保証のリスクも同時に継承することになります。

親族内承継の流れ

ここからは親族内承継の流れを紹介します。

大まかな流れを知っておくことで、承継の全体像がつかみやすくなるからです。

  • 後継者選び
  • 株式の承継方法を選択
  • 社内・取引先への周知
  • 具体的な手続き開始
  • 名義変更に関わる手続き(保証など)

後継者選び

後継者を選ぶために重要なことは2点あります。

  • 後継者に事業を継ぐ意思があるかを確認する
  • 後継者に経営者となる資質があるか見極める

経営者が「この人に継がせたい!」と思っていても、後継者が同じように思っているとは限りません

また経営者の親族だからといっても、必ず経営者に向いているというわけでもありません。

次の経営者を担えるかどうか、時間をかけて見極める必要があるといえます。

株式の承継方法を選択

後継者を選んだら、株式の承継方法を選択します。

承継方法は以下の3つです。

  • 株式売買
  • 相続
  • 生前贈与

それぞれの特徴をご説明します。

株式売買

非上場株式の場合、上場株式のように市場価格で株価を決められません

そこで、以下の2種類から選択することになります。

  • 類似業種比準方式(類似会社の上場株式と比較して株価を計算する)
  • 純資産価額方式(自社の純資産から株価を計算する)

どのように計算すべきかは、株価算定経験のある専門家に必ず相談してください。

相続

経営者が亡くなった後に後継者へ遺産として株式を承継します。

特定の人に株式を集めたいのであれば、遺言が必須です。

なぜなら親や兄弟には法定相続分という分け前が存在するから。

誰に株式を残したいか決めたら、法律的に問題がないように財産の分配を考えましょう。

のちのちのトラブルを避けるためにも、専門家への相談は必須です。

生前贈与

経営者の存命中に後継者へ株式を承継させる方法です。

株式売買とは異なり、買い取り資金を準備する必要がないのが特徴。

以下を頭に入れながら、どの方法が良いかを選択しましょう。

  • 贈与税の非課税枠
  • 相続時精算課税制度
  • 事業承継納税の特例措置

ただし、事業の承継は「特別受益」に該当するため、相続と同様に遺留分が発生します。相続と同様、経営者と親族で充分な話し合いの時間を設けましょう。

社内・取引先への周知

後継者と承継方法が固まったら、社内の従業員や取引先に後継者を紹介します。

「後継者に引き継ぐと伝えたら取引先に不安を抱かれるのでは?」と思われるかもしれませんが、早めに伝えたほうが関係者の信頼を得やすいのです。

そのため、早いうちに社内の従業員や取引先に後継者を紹介した方がよいでしょう。

具体的な手続き開始

具体的な手続きとして、株式の譲渡やその準備を進めていきます。

どれだけ考えても、株式が移転しないことには、後継者に実権は渡りません

もし、事業承継納税の特例措置を請けるなら、以下の手順も必要です。

  1. 特例承継計画を提出し、都道府県知事の認定を受ける
  2. 認定申請書を提出する

この制度を受けるには2023年3月31日までにひとつ目を済ませる必要があるので、期日には気をつけてくださいね。

名義変更に関わる手続き(保証等)

名義変更の手続きを進めていきます。

先代の個人名義では使い続けられません。

以下の名義を確認しておきましょう。

  • 社名・屋号(商標登記している場合)
  • 許認可関係(所轄行政庁へ申請)
  • 銀行口座(新規開設が必要なことも)
  • 賃貸物件含めた各契約
  • 広告やパンフレット、封筒などの外部向けの書類
  • ホームページ

親族内承継を成功させるコツ

親族内承継を成功させるコツをご紹介します。

むやみに準備をしても、無駄も多く、結局上手くいかないことが多いです。

  • 準備は早めに
  • 親族間での情報共有
  • 古株社員への配慮
  • 補助金の活用

ポイントをしっかりと整理して臨みましょう。

準備は早めに

族内承継を成功させるには、できるだけ早く準備を始めることが鍵になります。

親族内継承の場合、事業の承継に5年以上かかった割合が43.9%です。(参照:2021年度版中小企業白書|中小企業庁)

経営者の変更は会社の根本に関わる重要な問題なので、時間をかけておこないましょう。

親族間での情報共有

後継者候補となる親族だけでなく、会社経営に関わらない親族とも情報共有しておく必要があります。

なぜなら親族は遺留分の請求権利があるので、全体像を理解してもらうことでトラブルリスクが軽減できるからです。

以下のようなことを中心に話し合います。

  • 会社の状況
  • 会社の将来
  • 後継者について
  • 各親族の役割

経営者が元気なうちに財産の分割を進めておくと承継の際にスムーズです。

古株社員への配慮

親族だけでなく、古株の社員とへの配慮も大切です。

承継までの間に信頼関係を築けていないと、在職期間が長い古株社員の反感を買うおそれがあるからです。

承継前から社員との交流を増やしておくとよいですね。

補助金の活用

事業承継をきっかけに新しい事業を始める企業には、補助金が支給されます。

受付期間や条件は、中小企業庁のWebサイトに記載されています。

詳しくは以下のホームページ、もしくは当税理士事務所までご連絡お待ちしております。

中小企業庁ホームページへ(令和4年申請用)

まとめ:親族内事業承継には、早めの準備が鍵

当記事の内容をまとめます。

  • 親族内承継とは、親族の誰かに事業を引き継ぐこと
  • 親族内承継のメリット・デメリットはどちらもきちんと把握しよう
  • 親族内承継を成功させるには、早めの準備が鍵

親族内承継は、ひとつの有効な事業承継方法。

早くから準備ができて、信頼できる親族に引き継げるのがメリットです。

ただし正しく準備をしなければ、いくら信頼できる身内とはいえ、うまくいかないことも。

早めから準備を始めて、後継者がスムーズに引き継ぐ土台を作っていきましょう