事業承継における株式譲渡の重要性|株式譲渡3つの方法やその手順を解説
✔当記事はこのような方に向けて書かれています
「株式譲渡って何のことかわからない」
「株式譲渡ってどうやるのが1番良いのだろう?」
「事業承継においての株式譲渡の手順が知りたい」
✔当記事を通じてお伝えすること
- 株式譲渡とは
- 株式譲渡の方法
- 株式譲渡の手順
当記事では、株式譲渡とは何かはもちろん、事業承継において、どのように株式譲渡を進めるかの手順までご説明します。
ぜひ最後までご覧ください。
事業承継における株式譲渡とは
事業承継における株式譲渡とは何かを解説していきます。
株式譲渡は、事業承継をする方法の中でも、譲渡側・譲受側のどちらにもメリットがある、有効な方法のひとつだからです。
- 事業承継における株式譲渡とは?
- 事業承継時の株式譲渡先3種
- 事業承継における事前準備の必要性
事業承継における株式譲渡とは?
事業承継における株式譲渡とは、現経営者が保有している株式を後継者に譲渡することです。
株式を譲渡することにより、経営権を譲り、事業の承継ができます。
日本にある企業の大半は、経営者が株式を100%保有する、いわゆるオーナー企業です。
高齢になり、次世代に経営権を譲るためには、株式の譲渡が必須なのです。
事業承継時の株式譲渡先3種
事業承継時の株式譲渡先3種類について説明します。
それぞれに後継者の立場や譲渡方法に違いがあるからです。
譲渡先は以下の通り。
- 親族内での事業承継
- 社内での事業承継
- 外部への事業承継(M&A)です。
それぞれ違いを紹介します。
親族内での事業承継
1点目は子や孫など現経営者の親族に譲渡する方法です。
日本の中小企業はいわゆる同族企業が多く、事業承継の株式譲渡先として一般的に想像しやすい先になります。
親族で株式を譲渡する場合は、以下の方法からひとつ、もしくは組み合わせて株式を譲渡します。
- 売買
- 生前贈与
- 相続
社内での事業承継
2点目は、取締役や従業員といった会社に所属している人から後継者を選んで譲渡する方法です。
自社株を譲渡してもらう場合、売買に必要な資金の調達が必要になるケースがほとんど。
贈与する方法もありますが、その場合は贈与税がかかります。
中には優秀な社員に経営だけを任せ、株式は現経営者やその家族が保持し続ける場合もあります。
外部への事業承継(M&A)
3点目は、M&Aと呼ばれる外部の第三者に譲渡する方法です。
譲渡先が法人の場合は、譲渡先の子会社となります。
親族や社内での譲渡と違う点は、決算書上で認識できない簿外債務も含めた全ての財産を細かく計算する必要があること。
事前のデューデリジェンス(企業価値評価)が必須となります。
事業承継における事前準備の必要性
事業承継においては事前準備が何より重要です。
なぜなら事業承継には、さまざまなリスクあるからです。
具体的には、以下のようなケースがありました。
- 現経営者が突然の病気や事故で死亡もしくは経営困難な状況に陥ってしまった
- 後継者の不在または能力不足だった
- 株主間の争いが発生してしまった
- 相続税などの納税資金が不足した
事前に準備をしておけば、さまざまなリスクを回避しやすくなるでしょう。
株主が持つ2つの権利について
こちらでは、株主が持つ権利について解説します。
権利について理解することで、なぜ株式譲渡が事業承継において大切かがわかるからです。
- 自益権
- 共益県
自益権
自益権とは、会社からの金銭を受け取る権利のことを指します。
自益権の内容は主に2つです。
- 株式の配当:利益が出た場合の一部を受け取れる
- 財産の分配:会社が解散する場合、残った財産を分配して受け取れる
共益権
共益権は会社の経営に参加できる権利を指します。
経営への参加は主に株主総会での議決権の行使に当たります。
株主総会での議決は原則1株につき1票なので多くの株を保持している経営者の意向が強く出ます。
株式譲渡の方法3選
株式譲渡の方法を解説します。
なぜならそれぞれおこなうべき場面や、税金のかかり方が異なるからです。
- 売買
- 生前贈与
- 相続
売買
1つ目は、株式の売買による譲渡方法です。
現経営者の株式を、後継者は現金で買い取ります。
社内取締役やM&Aでの後継者を選んだ場合は、この方法をとるのが一般的です。
親族内承継でも、相続時の遺留分で揉めたりしないよう、売買による方法が使われることもあります。
生前贈与
2つ目は、現経営者が生きている間に株式を後継者に贈与する方法です。
贈与契約を通じて、現経営者の株を無償で後継者に譲ります。
主に親族が後継者になる場合に、贈与による方法が使われることが多いです。
贈与で譲渡する場合は、以下の3つを知っておくと良いでしょう。
- 暦年贈与
- 相続時精算課税制度
- 事業承継税制
ご不明な点があれば、いつでもお気軽に西山税理士事務所まで。
相続
3つ目は、現経営者の死後に後継者に株式を相続するという方法です。
遺言書や遺産分割協議書により、株式を含めた相続財産を分けます。
相続における譲渡では、以下の点に注意が必要です。
- 遺留分
- 相続税の納税
- 遺産分割協議では、法定相続分が基準となる
できる限り、事前に遺言を用意しておくのが最善といえます。
事業承継における株式譲渡4つの手順
事業承継における株式譲渡の手順をご説明します。
正しい手順でおこなわなければ、スムーズに事業承継がおこなえません。
株式譲渡に関しては会社法に定められてる手続きを踏む必要があるのです。
- 株式の譲渡請求
- 承認期間の決議
- 株式譲渡契約の締結
- 株主名簿の書き換え
以下具体的な手順を紹介します。
株式の譲渡請求
株式制限が付いた株式を譲渡する場合、株式譲渡承認請求が必要です。
譲渡制限株式は、会社が承認しない限り、譲渡ができません。
株式譲渡承認請求書には、株式を譲り受ける後継者の氏名や株式数を記載します。
承認機関の決議
次に承認期間の決議が必要です。
株式譲渡承認請求書を受け取った会社は、承認機関にあたる取締役会もしくは株主総会で承認決議がおこなわれます。
2週間以内に決定内容を請求者に通知しなければならず、通知しない場合は承認と見なされます。
株式譲渡契約の締結
株式の譲渡が合意に達したら、双方が株式譲渡契約を締結します。
株式譲渡契約書には、主に以下の内容が盛り込まれています。
- 譲渡に合意した旨
- 譲渡の目的
- 譲渡株式の数
- 譲渡額(贈与の場合は無償)
- 表明保証:株式に関する内容が真実であることを表明
- 契約解除に当たる事由・損害賠償
内容に双方が合意すれば、株式譲渡契約成立です。
株主名簿の書き換え
株式譲渡契約を締結したのちに株主名簿の書き換えが必要です。
株主名簿を書き換えた後は、株主名簿記載事項証明書に書き換えた事実を記載します。
これにより株式譲渡は完了です。
株式譲渡に関わる税金
株式を譲渡した際に、譲渡側または譲受側に税金がかかります。
株式譲渡にかかる税金の種類は、以下のいずれかになります。
- 所得税および住民税
- 贈与税
- 相続税
以下にそれぞれかかる税金を譲渡側・譲受側に分けて解説します。
譲渡側の税金
譲渡側に税金がかかる可能性があるケースは、売買による場合です。
売買が成立すると、譲渡益に対して、所得税と住民税がかかります。
税率の内訳は、所得税分約15%と住民税分5%、合計約20%です。
(譲渡年により、復興特別所得税で多少の誤差があります)
譲受側の税金
授受側には、相続もしくは贈与で受け取った場合に税金がかかります。
それぞれについては以下のとおり。
贈与税
贈与方法は主に2通りあります。
- 暦年贈与:1年間で贈与を受けたうち110万円を差し引いた金額に税率をかけたもの
- 相続時精算課税制度:2,500万円を超えた額に税率を欠けたもの
ただしそれぞれで注意する点もあります。
例えば、相続時精算課税制度では、後から相続税がかかることがあるなど。
専門家と相談しながら進めるのが、良いでしょう。
相続税
株式を含める全財産額から相続税総額を計算し、相続した財産により、各々が税金を負担します。
原則現金での納付となることから、株式で受け取った場合でも、別途現金の準備が必要です。
事業承継税制について
事業承継税制を活用すると、税金で優遇される場合があります。
詳しくは別記事でご紹介していますので、興味がある方はご覧ください。
もしくは、こちらまで直接ご連絡を。
まとめ:事業承継では、株式譲渡の方法選びが大切
当記事の内容をまとめます。
- 株式譲渡とは、他人に株式を譲渡すること
- 株式譲渡の方法は、大きく3種類
- 株式譲渡の手順は、法律も関係するので正しく進めなくてはならない
事業承継において、株式譲渡はとても重要です。
株式が譲渡されて初めて、会社が後継者に引き継がれるのです。
ただし進め方がいくつかあるので、絶対にこの方法が良いというものはありません。
状況に応じて、さまざまな方法を組み合わせておこなうのが一般的といえるでしょう。