有限会社と株式会社の違い|売却や相続、清算の手順をそれぞれ解説
✔当記事はこのような方に向けて書かれています
「有限会社と株式会社の違いが知りたい。」
「有限会社って売却できるのだろうか?」
「有限会社を具体的に承継する方法は何だろう?」
✔当記事を通じてお伝えすること
- 有限会社と株式会社の違い
- 有限会社を売却する際の手順
- 有限会社を相続する際の手順
当記事では、有限会社と株式会社の違いはもちろん、さまざまなフェーズでどのような方法を取るべきかを解説しています。
ぜひ最後までご覧ください。
有限会社について知っておくべきこと3選
はじめに、有限会社について知っておくべきこと3選について解説します。
事業承継や相続対策を検討するためには、有限会社の特徴を理解しておく必要があるからです。
- 有限会社とは
- 有限会社と株式会社の違い
- 有限会社は売却できる?
有限会社とは?
有限会社とは、社員が会社に対して出資額を限度に責任を負う会社です。
以下の特徴から、比較的小規模な家族経営などの事業に適していると言われてきました。
- 取締役に任期がない
- 決算の公告義務がない
2006年の会社法施行に伴い廃止されたため、現在は新設できなくなっています。
以前からあった有限会社は「特例有限会社」として存続し、有限会社の特徴を引き継ぎながら株式会社と同様に扱われています。
有限会社と株式会社の違い
特例有限会社として会社法上は株式会社と同様に扱われていても、株式会社と異なる点があります。
具体的な違いは、以下の通りです。
- 定款で定めなくても、株式に譲渡制限がある
- 取締役の任期がない
- 会計参与や会計監査人を設置できない
- 決算公告義務がない
- 株式交換や株式移転ができない
有限会社は売却できる?
有限会社も出資持分を譲渡すれば売却できます。
出資持分が株式とみなされるため、出資持分を譲渡すれば会社の所有権が第三者に移るからです。
ただし、有限会社の株式には譲渡制限がついているため、あらかじめ会社の承認を得る必要があります。
有限会社を譲渡するときに気を付けるべきこと
次に、有限会社を譲渡するときに気を付けるべきことを解説します。
注意点を把握しておけば、実際に手続きする際に役立つからです。
- 株式の譲渡制限
- 譲渡制限の承認期間
- 株式価格の評価方法
株式の譲渡制限
有限会社の株式には譲渡制限があります。
譲渡制限は会社に不利益になる第三者への譲渡を防ぐ目的があり、譲渡制限株式を売却する際は会社の承認が必要です。
なお、定款に株式譲渡に関するルールの記載がなくても、会社法上は譲渡制限株式として扱われるので、注意しましょう。
株式譲渡の承認機関
通常、有限会社の株式譲渡の承認は株主総会が行います。
有限会社は株式会社と異なり、取締役会が設置できないからです。
ただし、特別決議を行い定款を変更すれば、承認者を変更することも可能です。
具体的な変更例は、主に以下のような内容があげられます。
- 代表者1名で承認する
- 取締役全員の同意で承認する
- 取締役の過半数の同意で承認する
会社の規模が大きく株主総会を開催するのに労力や費用がかかる場合は、定款を変更したほうが手続きがスムーズに進められるケースもあります。
株式価格の評価方法
株式価格の評価方法は以下の3種類があります。
会社の規模によって、評価方法が異なるからです。
- 純資産価額方式
- 配当還元方式
- 類似業種比準方式
純資産価額方式
純資産価額方式とは、会社の純資産額を使い評価する方法です。
会社のプラスの資産からマイナスの資産を差し引いた金額を発行株数で割って計算します。
具体的には、純資産価額を発行株式数で割って1株あたりの価格を算出します。
ただし、相続税上の計算方法で資産を評価するため、実際の決算書の帳簿とは数字が異なる点に注意が必要です。
配当還元方式
配当還元方式とは、会社の配当金額を基に1株あたりの評価額を算出する方法です。
対象の会社の直近2期分の平均配当金額を10%の利率で割って計算します。
配当還元方式が利用できる場合の条件は、以下の2点で判断されます。
- 同族株主がいるか
- 今回株式を取得する者が同族株主かどうか
適用条件が細かく定められているため、税理士や金融機関などの専門家に相談しながら進めると安心です。
類似業種比準方式
類似業種比準方式とは、株式譲渡する企業と同一の業種・ 規模の上場企業を比較して評価額を計算する方法です。
従業員数や資産額などの会社の規模に応じて大会社・中会社・小会社に分け、利益・純資産・配当の3項目を比較します。
類似業種比準方式には以下の特徴があります。
- 株式の評価額が上場株式の株価の影響を受ける
- 利益が高い会社ほど評価額が高くなる
有限会社を売却する際の手順
有限会社を売却する際の手順は以下のとおりです。
- 株式の譲渡制限を確認する
- 株主総会が承認決議を行う
- 会社が株式譲渡を行う旨を通知する
- 株式を譲渡する
- 株主名簿を書き換える
特例有限会社であれば、株式譲渡制限会社としての手続きが必要です。
そのため、株主総会での承認手続きをおこないましょう。
有限会社を相続するときの手順
有限会社を相続するときの手順は以下のとおりです。
- 株式を評価する
- 相続人全員で遺産分割協議を行う
- 株主名簿を書き換える
- 相続税を納付する
詳しくは以下の記事でも例を記載しています。
有限会社を清算する手順
次に、有限会社を清算する手順について解説します。
あらかじめ手順を確認しておけば、清算手続きを円滑に進められるからです。
- 会社を解散できる理由に当てはまる
- 会社清算に必要な手続きをする
- 解散の登記をおこなう
- 会社清算人による処理をする
- 清算の完了
会社を解散できる理由に当てはまる
まず、会社を解散できる理由に当てはまるかを確認します。
会社法上で解散できる理由に該当しなければ、実際に手続きが進められないからです。
具体的な理由には、以下の内容があげられます。
- 定款の存続期間が満了したため
- 定款の解散事由が発生したため
- 株主総会で解散決議がされたため
- 合併によって会社が消滅するため
- 破産手続きの決定開始があったため
- 裁判所から解散命令が下されたため
- 休眠会社のみなし解散によるため
会社清算に必要な手続きをする
解散理由が発生したら、清算に必要な手続きを行います。
具体的な流れは以下の通りです。
- 清算人の選出
- 官報への解散公告
- 財産目録や貸借対照表の作成
- 株主総会の特別決議
なお、官報への解散公告は、2ヶ月超掲載しなければならないと定められています。
そのため、清算手続きには相応の期間がかかることを想定し、スケジュールを組む必要があるといえます。
解散の登記をおこなう
株主総会での特別決議から2週間以内に、法務局へ解散と清算人選任の登記を行います。
経営者本人でも手続きできますが、司法書士などの専門家に依頼することもできます。
手続きの際には、以下の書類が必要です。
- 清算人登記申請書
- 定款
- 株主総会議事録
- 清算人会議事録
- 清算人の就任承諾書
- 株主リスト
- 別紙(登記すべき事項を記載)
- 委任状
- 印鑑届書
- 清算人の証明書
準備する書類が多いため、漏れのないように注意しましょう。
会社清算人による処理をする
解散の登記が完了したら、会社清算人が清算を行います。
この処理では会社が所有するすべての財産を現金化し、手元にある現金ですべての負債を返済する流れです。
清算処理が完了したら、株主総会を開催し清算事務の報告を行います。
なお、資金不足により負債をすべて返済できない場合は、清算ではなく特別清算や破産の申し立てを行います。
清算の完了
すべての負債を返済した後も現金が残る場合は、持ち株数に応じて株主に分配します。
清算報告を行った株主総会から2週間以内に、清算結了の登記を行えば手続きは完了です。
まとめ:有限会社と株式会社の違いを抑えて、事業承継に臨もう
当記事の内容をまとめます。
有限会社は、株式会社と以下の点において異なります。
- 定款で定めなくても、株式に譲渡制限がある
- 取締役の任期がない
- 会計参与や会計監査人を設置できない
- 決算公告義務がない
- 株式交換や株式移転ができない
これらの違いにより、売却や相続、精算時で多少異なるプロセスがあります。
もちろんすべて違うわけではないので、きちんと専門家に相談しながら進めるのが大切。
西山税理士事務所では、いつでも経営者の皆様のお力になれるよう、無料相談を承っております。