ワンマン社長に万一?代表取締役の死亡時にやるべき手続きまとめ
✔当記事はこのような方に向けて書かれています
「ワンマン社長に万一があったら、やるべきことって何?」
「会社を誰が、どうやって引き継いでいくのか知りたい」
「株式ってどのように行き先が決まるの?」
✔当記事を通じてお伝えすること
- ワンマン社長に万が一があったら真っ先にやるべきこと
- 事業承継先や株式の行き先
- 事業承継先が見つからなかった場合の手続き
当記事では、ワンマン社長に万一があった場合に何をやるべきかはもちろん、もし誰も引き継ぎ先がいない場合の手順までご紹介しています。
ぜひ最後までご覧ください。
ワンマン社長の万一で、真っ先にやるべきこと3選
はじめに、ワンマン社長に万一のことがあった場合、真っ先にやるべきことを解説します。
社長がワンマンの場合は、業務上の決定権が社長一人に集中していることが多く、より迅速な対応が求められるからです。
- 社内への報告
- 取引先通知
- 各種手続き
それぞれ詳しく確認していきましょう。
社内への報告
最初にやるべきことは、社員に対して社長が亡くなった事実を伝えることです。
なぜなら、社長がワンマンの場合は、業務推進と社員の士気の双方において大きな影響があるからです。
決裁権限が社長にあった業務は、新たな責任者を速やかに決める必要があります。
普段の業務に支障が出るのを避けるためにも、報告は円滑に行いましょう。
取引先に通知
取引先への通知も重要です。
ワンマン社長は取引先からの信頼も厚く、対応が遅れると今後の取引に支障が出る可能性があるからです。
社葬を行う場合はもちろん、近親者のみで葬儀を行う場合でもスムーズな連絡が必要だと言えます。
取引先が認識していないということがないように、すみやかな通知が求められます。
各種手続き
金融機関の各種手続きも同時に進める必要があります。
社長が融資の保証人や担保提供者になっている場合は、相続が発生すると新たに社長になる人や相続人へ変更するための手続きが必要になるからです。
例えば、融資の保証人の変更、生命保険金の請求の手続きを進めるためには、以下の書類が必要です。
- 会社の登記簿謄本
- 会社の印鑑証明書
- 死亡証明書
- 住民票の除票
手続きに必要な書類を用意するためにも、上記の書類はすみやかに揃えることをおすすめします。
ワンマン社長の次に事業を承継するのは誰?
次に、事業承継者を決める方法について解説します。
社長が亡くなっても会社自体は相続の対象にならず、別途事業を承継する人を決める必要があるからです。
- 会社自体は相続対象ではない
- 株式の相続人を決定する方法
- 株主総会・取締役で承継者が決まる
承継者を決める方法について確認していきましょう。
会社自体は相続対象ではない
まず、会社そのものは相続財産の対象にはなりません。
なぜなら、会社は社長が亡くなった後も、「法人」として存続しているからです。
そのため、相続人は会社名義の財産ではなく、社長が持っていた株式のみを相続します。
株式を相続すれば、結果として会社の経営を引き継ぐことにつながるのです。
株式の相続人を決定する方法
株式の相続人を決定する方法は遺言や遺産分割協議があります。
株式は社長個人が所有しているため、相続財産の対象になるからです。
話し合いが滞りなく進めば問題ありませんが、相続人同士で揉めた場合は株式の相続に時間がかかり、結果として会社経営に支障が出ることも少なくありません。
可能な限り、社長が生前のうちに株式を相続する人を決めておくことをおすすめします。
株主総会・取締役会で承継者が決まる
承継者は株主総会・取締役会で決まります。
会社法では、役員の選任は株主総会で、代表取締役の選定は取締役会でおこなうと定められているからです。
株主が決まらなければ株主総会を開くことができないため、社長が所有していた株式を誰が相続するのか、すみやかに決める必要があります。
承継者が決まり登記が完了すれば、先ほど紹介した各種手続きを行う準備が整います。
株式の行き先を決める5つの方法
次に、株式の行き先を決める方法を5つ解説します。
複数の方法を理解しておくと、比較検討した上で状況に合った選択ができるからです。
- 遺言
- 遺産分割協議
- 相続放棄
- 株式譲渡
- 金庫株
株式の行き先を決める方法をそれぞれ確認していきましょう。
遺言
遺言書がある場合は、遺言書の記載通りに財産を分配します。
原則として、遺言書は遺産分割協議よりも優先されるからです。
もし承継者が決まっている場合には、生前のうちに遺言書を作成しておくと、事業承継対策として有効です。
株式を相続する人をあらかじめ決めておけば、万一の時の手続きも円滑に進められるでしょう。
遺産分割協議
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。
相続人同士が話し合い、納得した上で相続手続きを行えるようにするためです。
株主総会の決議には発行済株式の過半数が必要になるため、株式の相続方法には細心の注意を払います。
特に社長の子供が複数いる場合は、誰がどのくらい相続するのかを十分に話し合う必要があるでしょう。
相続放棄
相続人が会社を継ぐ意思がなく、社長個人のマイナスの財産が多い場合には、相続放棄という選択肢もあります。
本来引き継ぐ権利がある人が相続放棄すると、別の人が相続できる可能性が生まれるからです。
相続放棄は株式の行先を決める手段の一つではありますが、相続放棄をすると撤回できない、プラスの財産も含めたすべての財産を相続する権利を失う、というデメリットもあります。
上記のデメリットをよく確認し、じっくり検討する必要があるでしょう。
株式譲渡
第三者に株式を譲渡する方法もあります。
新たに株式を取得する人に、会社の経営権を渡せるからです。
信用できる人に株式を譲渡できるよう、「譲渡制限株式」とすることをおすすめします。
譲渡制限株式のルールを適用するには、定款に「当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の承認を受けなければならない」といった文言を記載する必要があります。
金庫株
金庫株として会社に買い取ってもらうのも有効です。
会社法では、株式買取請求権が認められており、株主が保有する株式を会社に買い取るよう請求できるのです。
金庫株を活用すると、株式が分散するリスクを防げる点や、相続人が負担する相続税を減らせる点でメリットがあります。
株式を譲渡する人が見つからない場合は、金庫株の活用を考えてみてはいかがでしょうか。
承継者が見つからないときの廃業の手順
最後に、承継者が見つからない場合の廃業の手順について解説します。
廃業手続きはすぐにできるものではなく、適切な順序で進める必要があるからです。
- 株主総会の決議
- 解散の登記
- 財産目録の作成
- 公告の手続き
- 清算業務
- 財産の分配
- 清算結了の決算書
- 清算結了登記
手順をそれぞれ確認していきましょう。
株主総会の決議
はじめに、株主総会で解散の決議を行います。
会社を解散するためには、株主総会に出席した株主の3分の2以上の賛成が必要だからです。
上記に加えて、清算人の選定と定款の変更についても話し合いをします。
漏れのないように進めていきましょう。
解散の登記
次に、2週間以内に解散と清算人の登記を行います。
会社が解散した旨を外部に知らせる必要があるからです。
実際の手続きは司法書士に依頼するのが一般的です。
財産目録の作成
登記の後、清算人が解散日現在の財産目録を作成します。
適切に手続きを進めるためには、清算人が会社の財産を詳細に把握する必要があるからです。
財産目録の作成後は、会社の財産状況を株主に開示するために、株主総会で承認を得ます。
会社法では「遅滞なく」と定められていますが、手続きの性質上すみやかに作成することが求められます。
公告の手続き
官報により解散公告の手続きをおこないます。
債権者に対して、解散した事実を公表する必要があるからです。
債権者は会社がなくなってしまうと、売掛金などの債権を回収できなくなるリスクがあるため、債権者保護の目的でこの手続きが定められています。
解散公告は2ヶ月以上かけて行い、短縮できない点にも注意してください。
清算業務
返済する債務が確定したら、清算業務を行います。
解散により会社自体がなくなるため、すべての取引を解消する必要があるからです。
会社にある資産をすべて売却し、債権を回収して資金を集め、集めた資産で債務もすべて返済します。
財産の分配
債務を返済した後も残っている財産がある場合は、株主に分配します。
残った財産は、出資した株主のものになるからです。
持っている株数に応じて、清算人が財産を分配します。
清算結了の決算書
財産が分配できたら、清算完了の決算書を作成します。
清算手続きの収入や費用、一株あたりの分配額などを記録として残す必要があるからです。
清算結了の決算書も、株主総会で承認を得る必要があります。
清算結了登記
株主総会の承認を得られたら、2週間以内に清算結了登記を行います。
清算結了登記により、会社が完全になくなり、登記簿が閉鎖されるからです。
この手続きを失念してしまうと、会社が存続していることになり、法人税も課税されてしまうため注意してください。
まとめ:ワンマン社長死亡時には、誰が承継者かを明確に
当記事の内容をまとめます。
- ワンマン社長の万一では、社内外への通知を忘れずに
- 誰が引き継ぐかは正しい手順でおこなわなければならない
- 承継者が見つからないときは、廃業も視野に入れなければならない
創業者でもあるワンマン社長に万一があった影響はとても大きいものです。
残された家族や従業員は、不安の中やるべきこともたくさん。少しでも負担を和らげるために、西山税理士事務所の活用をご検討ください。