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【完全版】事業承継とは?その流れや方法をわかりやすく解説

✔当記事はこのような方に向けて書かれています

「事業承継はどのようにおこなうのだろうか?」

「事業承継の手順が知りたい」

「事業承継で気を付けることは何?」

✔当記事を通じてお伝えすること

  • 事業承継とは?
  • 事業承継の流れ
  • 事業承継をスムーズにおこなう方法

当記事では、事業承継の流れはもちろん、事業承継をするための具体的な方法やスムーズにおこなうためのポイントまで丁寧に解説しています。

ぜひ最後までご覧ください。

事業承継の基礎知識

まずは、事業承継の基礎知識を見ていきましょう。

流れを見る前に、基本的なことを確認する必要があります。

  • 事業承継とは
  • 事業承継の目的
  • 事業承継の必要性

事業承継とは?

事業承継とは、企業の経営を後継者に引き継ぐことです。

事業承継において引き継がれるものは、具体的には3つあります。

  • 経営権
  • 経営資源
  • 物的資産

経営権

経営権を後継者へ引き継ぎます。

株主総会の普通決議を単独で行えることが条件となり、発行済みの自社株式の過半数を承継していれば問題ありません。

そのためには、会社を任せられる後継者を探しておき、予め経営を任せられる人材に育てておく準備が必要です。

経営資源

会社の企業理念・社内の人材・ブランド・独自のノウハウ・信用力・取引先の顧客・人脈など、会社を経営していく上で必要な経営資源を引き継ぎます。

特に、取引先の顧客や社内の人材などには、事業承継に関する充分かつ丁寧な説明が求められるでしょう。

対外的な理解をしっかり得ることで、円滑な事業承継が可能となります。

物的資産 

会社の株式、不動産などの事業用資産、事業の運転資金などの物的資産を引き継ぎます。

経営者個人で所有している事業用資産に関しては、事業用資産も併せて移転しましょう。

また、個人事業主は事業承継に伴い、全ての事業用資産を引き継ぐ必要があります。

事業承継の目的

事業承継を行う目的は、主に2つです。

  • 事業を存続させるため
  • 後継者に事業を引き継ぐため

事業を存続させるため

自身の会社を倒産・廃業を防ぎ、事業を存続させたいとする場合です。

現状では、多くの経営者が親族などに後継者がいなく、事業継続を断念するケースが増えています。

これは、少子化や多様性の尊重などに起因することや、不景気により経営状態が悪い中で事業承継したくないという事情があります。

しかし、M&Aなど、事業を存続させるための手段も増えていますので、専門家などと相談して事業承継を進めるのも1つでしょう。

後継者に事業を引き継ぐため

親族や信頼できる人物がいて、経営者がその人物に事業を託したいとする場合です。

その際、後継者には予め会社経営の経験を積ませておくことや、株式の受け渡しに際する資金の用意や債務整理など、事前に準備をさせる必要があります。

早めに人材を選定して、綿密な計画の立案の上、事業承継を実行をしていくべきでしょう。

事業承継の必要性

現在、事業承継の必要性は増しています。

その理由は2点です。

  • 経営者の高齢化と後継者の不足
  • 相続のトラブル回避

経営者の高齢化と後継者の不足

2025年時点での70歳以上の中小企業経営者は381万人の内、全体の6割に及ぶ228万人になると言われています。

また、中小企業4,000社にアンケートを取った調査では、60歳以上の経営者の内、およそ半数が廃業を予定しているとし、その理由の3割が後継者不足をあげています。(日本政策金融公庫調べ、2016年度調査)

こうした経営者の高齢化と後継者の不足という問題から、事業承継の必要性が増しています。

相続のトラブル回避

円滑な事業継承を行うためには、相続についても考える必要があります。

会社の経営者が亡くなった場合、その後継者は事業だけではなく、会社の株式や事業用の資産などを引き継ぎます。

そこで計画的な事業承継が行われなければ、後継者と他の親族同士との間で対立が起こり、経営権などの争いに発展するリスクがあります。

最悪な場合、経営が立ち行かなくなる恐れもあるでしょう。

ですので、経営者は予め残された親族などへ遺産をどのように分け合うか決めておくことが大切です。

事業承継の基本的な3つの方法

事業承継とは、株式を譲渡し、経営権を譲ること。

主な方法は以下の3つです。

  • 親族内承継
  • 社内承継
  • 外部への売却

それぞれメリット・デメリットがあり、詳しくは以下の記事にてご紹介しています。

事業承継における株式譲渡の重要性|株式譲渡3つの方法やその手順を解説

事業承継の流れ

事業承継の流れを見ていきましょう。

最適な方法を選ぶためにも、以下の手順で進めることをおすすめします。

  • 現状把握
  • 候補者選び
  • 事業承継計画作成
  • 社内・取引先への周知
  • 事業承継へ着手

現状把握

事業承継を始める際、まずは現状把握をします。

これは現状把握をすることで、会社の新たな経営課題を発見できたり、事業承継の計画が立てやすくなるためです。

具体的には、会社の人・物・金の状態を把握するために、会社の構成や財務諸表などを振り返ります。

状況によっては、会社や経営者自身も含め、借入金や貸付金の整理なども必要です。

事業承継を始める際、まずは状況把握に努めて、会社の課題を洗い出すようにしましょう。

候補者選び

事業承継では、事業を誰に引き継ぐかが最も重要です。

後継者を決めなければ、事業承継を始めることができないからです。

後継者の候補は、具体的に3つに分類できます。

  • 親族
  • 役員または従業員
  • 第三者

親族

子供や親族に後継者の候補がいる場合、早期に後継者になるかの意思確認を行います。

仮に後継者となる意思があるならば、予め会社経営の経験を積ませておくことがベターです。

実務をこなしていくことで、スムーズな事業承継が可能となるでしょう。

役員または従業員

候補者が親族にいない場合、会社の役員や従業員から後継者を選定する方法です。

ただ、株式の受け渡しに際する資金の用意や債務整理など、事業承継に必要な準備があります。

そのため、会社の役員や従業員から後継者を選定する際には、早期に意思確認を取るようにしましょう。

第三者

周りに候補者がいない場合、第三者への株式譲渡(M&A)や会社売却、株式公開(IPO)などにより、広く候補者を募っていく方法です。

しかし、第三者である新経営者へ会社を任せることで、従業員との摩擦が生まれ、経営状態の悪化を招く恐れがあります。

よって、新経営者と従業員との良好な関係性の構築を図る必要があるでしょう。

後継者は上記の3つより選定していきます。

繰り返しですが、後継者選びは事業承継において最も重要です。

しっかりと対策をして取り組むようにしましょう。

事業計画作成

後継者の選定ができたら、事業計画を作成していきます。

事業の方向性を明確にすることで、引き継ぎがスムーズになるのです。

主としては、経営者と候補者で全体のスケジュールや具体的な承継方法、そしてその対策や手続きについて記した事業計画書を作成します。

万全の経営体制を整えていくためにも、経営者と後継者はしっかりコニュニケーションを取り合い、事前に事業計画書を作成するようにしましょう。

社内・取引先への周知

社内や取引先への周知は、大切な手続きの1つです。

なぜなら、今後の会社との関係を継続してもらううえで、重要なことだからです。

社内や取引先への具体的な周知方法について解説します。

社内の従業員への周知

一般の従業員に対して

朝礼や夕礼などを使って直接周知します。

周知のタイミングとしては、事業承継の合意の直前又は締結日に実施するのが良いでしょう。

従業員に対して、雇用や待遇面で不安を与えてしまうことが考えられます。

そういった面も事前の協議で決めておき、しっかりと説明して、安心感を持って働いてもらえるようにしましょう。

役員や部課長クラスなどの人材に対して

役員や部課長クラスなど会社のキーマンのような人材については、個別面談などを活用して、退職されないように工夫することが必要です。

幹部クラスの人材の不安は、ここでなるべく払拭できるようにしましょう。

取引先への周知

取引先への周知方法は、具体的に2つあります。

  • 案内文
  • 直接報告する
案内文

取引先には、事業承継についての案内文を作成すると良いでしょう。

案内文があることで、取引先の混乱や不安を避けることが期待できます。

「いつ・誰が経営者となるのか」

「事業承継の内容」

「連絡先・引き継ぎ先」

案内文には少なくとも上記の3点は記載するようにしましょう。

直接報告する

特に重要な取引先の場合、案内文だけではなく後継者と同行訪問することも必要です。

後継者と直接顔を合わせて挨拶をすることで、取引先の安心感にも繋がり、事業承継後の取引もスムーズに行えるでしょう。

また、事前に案内文を送っておけば、挨拶のアポイントも取りやすくなるはずです。

事業承継は、経営者と後継者とのやり取りだけではありません。

対外的な説明をおろそかにすると、社内や取引先から反感が出るでしょう。

場合によっては、今後の会社経営に支障をきたしかねません。

事業承継について社内や取引先へ丁寧に周知し、理解を得ることが大切です。

事業承継へ着手

事業計画書のスケジュールに沿って、事業承継へ着手します。

具体的には、株式・事業用資産・代表権などを引き継ぎます。

これにより、後継者は「現」経営者となり、それまでの経営者は「先代」の経営者となります。

ただ、血縁関係やあらゆる人間関係は残るので、影響力自体は存続していくでしょう。

先代は現経営者に深入りすることのない、適度な距離感でのアプローチが求められます。

事業承継をスムーズにおこなうためのポイント5つ

事業承継をスムーズにおこなうためのポイントをご紹介します。

流れだけ掴んでも、ポイントをおさえなければ上手くいきません。

  • 準備期間をしっかりと確保する
  • 後継者を教育する

準備期間をしっかりと確保する

事業承継はしっかりと準備期間を確保することが大切です。

なぜなら、事業承継にかかる期間は長くて10年と言われるからです。

もちろん、会社の規模や事業内容などによって期間は変わります。

しかし、時間的な余裕がなければ経営のノウハウや顧客の人脈などを後継者に引き継ぐことは難しいと言えるでしょう。

準備期間を確保して、計画的に事業継承を実行しましょう。

後継者を教育する

事業を引き継ぐにあたり、後継者の教育が必要です。

具体的には、社内研修と社外研修の2つがあります。

社内研修

会社の各部門(営業・総務・財務・人事など)で経験を積みます。

会社業務の実態を知ることができ、より会社を俯瞰した視点で経営が行えるはずです。

また、各部門の社員と交流を深めることで、実際に経営者の立場になった際にも社員が親しみを感じやすくなったり、離職を防止できる効果も期待できるでしょう。

社外研修

他社で勤務したり、社外セミナーに参加するといったことで経験を積みます。

他社で行われている業務を知ることで、自社の改善ポイントなどを見つけるきっかけを掴めるでしょう。

社外セミナーで経営についての基本的な考え方を身に着けられます。

また、経営者同士の人脈を広げるきっかけになるかもしれません。

税金・納税への対策をする

事業承継では、税金・納税対策が必要になります。

なぜなら、現経営者から法定相続人や親族の後継者へ承継する際、後継者がその自社株式の評価額に応じた贈与税もしくは相続税を納税することになるからです。

ですので、後継者の負担を考えると、なるべく税金対策(節税)しておくことが望ましいでしょう。

ここでは、税金対策として有効な方法を2つ解説します。

  • 相続時精算課税制度
  • 不動産の購入

相続時精算課税制度

後継者へ贈与をする際、累計で2,500万円までの財産が非課税となる制度です。

この制度の金額内であれば、後継者の税負担はまるまる無くなります

しかし、財産の相続時にこの贈与分の金額がまとめて相続税として課税されるため、注意が必要です。

  • 自社株式の評価額が今後上がる可能性がある
  • 経営初期段階で、後継者への負担をできるだけ少なくしたい

などの考えがある場合は、制度の利用を検討しましょう。

不動産の購入

不動産を購入すると、現金や株式などの資産で保有するよりも、資産評価額が低くなり、節税効果が期待できます。

土地の相続評価額は時価よりも低く、およそ80%の価格で計算されることになります。

さらに、その上にアパートやマンションを建築して、賃貸物件として貸し出せば、土地が「借家建付地」、建物が「貸家」という名目となり、さらなる節税効果が期待できます。

賃貸物件は、借主に権利の一部があるため、結果として評価額が下がるということです。

ただ、購入した不動産の下落や土地価格の上昇によって、思ったような節税ができないリスクもありますので、注意が必要です。

これらの節税対策を講じ、できるだけ後継者の負担を少なくするようにしましょう。

相続時のトラブルへの備える

経営者が亡くなった時のことを考え、相続時のトラブルに備えておく必要があります。

理由は、相続争いなどのトラブルに発展すると、親族などの仲は悪くなり、相続の手続きに影響を及ぼす可能性があるためです。

事前にできる対策としては、2点あります。

  • 相続人の確認
  • 遺言書の作成

相続人の確認

相続人とは、財産を相続する人を指します。

遺言書で指定された人、もしくは民法で規定された法定相続人が自動的に相続人となります。

場合によっては思いもよらない相続人が存在する可能性もあります。

トラブルを防ぐために、資産を誰に相続をするのかを決めましょう。

それから、どのような資産を、どうやって承継するのかと詰めていくことが良いでしょう。

遺言書の作成

遺言書を作成することは、自社株や不動産などの資産を円滑に承継させるために有効です。

特に、後継者に自社株や不動産などの資産を集中させる場合は、遺言書は必須となります。

親族間などでのトラブルを避けるため、遺言書は残しておくべきです。

これらのことを考慮し、相続時のトラブルに発展しないよう事前に備えておきましょう。

国や公的機関からのサポートを受ける

事業承継を検討しようと思っても、どこへ相談すればよいかわからないかもしれません。

そこで、事業承継に関する代表的な相談窓口をご紹介します。

事業承継・引継ぎセンター

国が都道府県に設置している公的な相談窓口です。

主に会社のM&A・マッチング支援や専門家を派遣しての事業承継支援、経営改善支援を行っています。

M&A仲介業者や取引金融機関など民間の会社を利用すると、多額の仲介手数料が発生する場合があり、支払いが難しい会社は廃業の道を選んでしまう恐れもあります。

事業承継・引継ぎセンターは行政が関わっており、専門家派遣の費用以外は無料となっています。

資金面で相談に二の足を踏んでいる経営者は利用してみるのもいいでしょう。

後継者人材バンク

民間会社による買収が難しい小規模な会社や個人商店のような事業者向けの公的な相談窓口です。

後継者人材バンクは、事業承継・引継ぎセンターが行う事業の1つで、小規模な事業者と個人の起業希望者のマッチングを支援しています。

M&Aでのマッチング先が見つからなかった事業者でも後継者を探すことが可能です。

また、行政が関わっており、基本的な費用は発生しません。

小規模事業者で承継先に困っている経営者は、こちらのサポートを受けてみるのもいいでしょう。

まとめ:事業承継では、流れをしっかりと把握する必要がある

当記事の内容をまとめます。

  • 事業承継とは、会社の経営権を引き継ぐこと
  • 事業承継では、流れをしっかりと把握することが大切
  • 事業承継をスムーズにおこなうためには、準備期間を長めにとる

事業承継にはとても時間がかかります。

流れを明確にしたうえで、正しく準備することが必要です。