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MBOとは?そのメリット・デメリット、有名な事例5選を徹底分析

✔当記事はこのような方に向けて書かれています

「MBOを行いたいがメリットやデメリットを知りたい」

「MBOが成功した事例を知りたい」

「MBOが不成立に終わった事例も知りたい」

✔当記事を通じてお伝えすること

  • MBOは株主の意向に左右されず、中長期的な事業転換を目指したい会社に最適
  • 交渉相手が自社の人間なので、互いの利益を考慮した交渉が進められる
  • 既存株主の多くに会社への期待感があると、MBOが不成立となる場合もある

当記事ではMBOの成功事例だけでなく、MBOが失敗する理由とは何かまでご理解いただけます

ぜひ最後までご覧ください。

MBOとは?

MBOは、自社の経営陣が社内の経営権を取得する方法です。

最近、経営戦略の一つとして注目されています。

  • MBOはバイアウトの一種
  • MBOのメリット
  • MBOのデメリット

どのような特徴があるのかを見ていきましょう。

MBOはバイアウトの1種

MBOは「バイアウト」の1種です。

バイアウトは対象会社の株式の過半数以上を買収し、経営権を取得する方法です。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。→ 「バイアウトとは?現役税理士がつ合えるその目的や成功のための手法

その中でもMBOは、自社の経営陣が株主となっている人から株式を買い取り、経営権を取得します。

主に次の目的で実施されます。

  • 経営体制を見直したい
  • 特定の株主の影響力を排除したい
  • 後継者問題を解決したい

MBOは停滞している経営再建や事業承継を進める際、有効な方法のひとつといわれています。

MBOのメリット

MBOは自社の経営陣が株式を買い取る仕組みなので、他企業に頼ることなく社内で事業経営の問題、後継者問題の解決を図れます。

メリットは以下のとおり。

  • 自社の事業改革が可能
  • 円滑な事業承継ができる
  • さまざまなリスクが回避できる

自社の事業改革が可能

MBOのメリットとして、自社の事業改革ができることが挙げられます。

なぜなら自社の経営陣が経営権を得ることで、スムーズな意思決定が期待できるからです。

MBOが成功すれば経営陣による事業の選択・集中、業績悪化からの立て直しも迅速におこなえます。

円滑な事業承継ができる

円滑な事業承継ができるようになるのも、MBOのメリットといわれています。

理由は以下の2点。

  • 経営陣に引き継ぐので大きな引き継ぎ作業が不要
  • 株式を買い取って貰えるので、株の譲渡方法で困らない

MBOを実施すれば、後継者がいないと考えていた企業でも、自社の経営陣に会社を引き継いでもらえるので安心です。

さまざまなリスクが回避できる

MBOにより、ほかのさまざまなリスクが回避できます。

例えば、上場企業として継続した場合の多額なコストや株式を公開して他企業からの買収リスクです。

上場企業であり続けるとデメリットの方が大きいと感じた場合、MBOでリスク回避を図れるのです。

MBOのデメリット

MBOのデメリットもきちんと理解しておきましょう。

MBOも、良い面だけではありません

  • 株主から反対されることがある
  • 経営が停滞する可能性がある

株主から反対されることがある

MBOを実施したいのに、株主が株式売却を拒否する事態が考えられます。

なぜなら、株主は保有株を高値で売却したいものの、経営陣がそれに見合う価格を提示しないと、交渉が決裂する可能性もあるからです。

そのため双方が歩み寄りをみせなければ、MBOが失敗する可能性は高くなります。

経営が停滞するリスク

MBOをしても、自社の経営改革や事業のスリム化等が図れない可能性もあります。

MBOは自社の経営陣が社内の経営権を取得する方法なので、経営を主導する人の顔ぶれは変わりません

経営再建を達成する斬新なアイデアもなく、経営が行き詰る事態もあり得るのです。

そのためMBO後、前もって次のような事柄を整理しておく必要があります。

  • 何を実現したいのか(具体的な目標値)
  • 実現のための施策(既存事業の廃止、新規事業の立ち上げ等)

MBOの最新成功事例2022年・2021年・2020年

MBOを実施できる運びとなり、経営再建の期待が高まっている会社は多いです。

事例を通しMBOに至った経緯や、MBOの結果を取り上げていきます。

  • ダイオーズのMBO
  • イグニスのMBO
  • ニッパンレンタルのMBO
  • ニチイ学館のMBO

ダイオーズのMBO

2022年に行われたMBOの事例で現在進行中です。

ダイオーズの事業

  • オフィスにコーヒーマシンを設置し、コーヒー豆の定期販売が主な事業
  • 日本・アメリカで事業を展開

MBOを実施したきっかけ

  • 新型コロナウイルス感染症の拡大で顧客であるオフィス閉鎖が相次ぐ
  • 主力のオフィス向けサービスの解約が目立ち、苦しい経営状況が続く

MBOを実施

  • インテグラル(国内投資ファンド)と協力し実施
  • 2022年4月、東証プライム市場に移行(株式の非公開化を発表)
  • 買付価格:1株につき1500円

MBOにより体制の再構築、迅速かつ機動的な事業構造改革を進めています。

イグニスのMBO

2021年に行われたMBOの事例で上場廃止が決定しました。

イグニスの事業

  • 主に「with(出会い・婚活マッチングアプリ)」をはじめとしたスマートフォンアプリ企画、開発、運営を行う
  • 以前はソーシャルゲームを手がけていた(ゲームからは既に撤退)

MBOを実施したきっかけ

  • 仮想現実(VR)事業の開発投資の負担で、2020年9月期まで4期連続最終赤字となる
  • 上場を廃止し、速やかに新サービスの開発をすすめる目的があった

MBOを実施

  • 株式会社i3が2021年4月に株式公開買付を実施
  • 同年6月には上場廃止が決定
  • 株主は株式会社i3、イグニス代表取締役社長、代表取締役CTOだけとなる

上場廃止で株主の意向に左右されず、中長期的な事業転換を進めています。

ニッパンレンタルのMBO

2021年に行われたMBOにより、上場廃止が決定しました。

ニッパンレンタルの事業

  • 主に建設機械等のレンタル事業を行う

MBOを実施したきっかけ

  • 建機レンタル業界の競争激化、売上・収益の縮小に悩まされる
  • 短期的に収益悪化が懸念される店舗の統廃合等を実施したい

MBOを実施

  • 2021年4月、ニッパンレンタル社長が株式を買い取る(1株につき1,050円)
  • 同年7月には上場廃止が決定
  • 株主はニッパンレンタル社長、高柳キャピタルだけとなる

株式の非公開化で迅速な経営改善策を実施し、事業の構造改革を進めています。

ニチイ学館のMBO

2020年に行われたMBOの事例で上場廃止が決定しました。

ニチイ学館の事業

  • 主に医療関連事業・ヘルスケア事業・教育事業を展開
  • 特にヘルスケア事業ではトータル的な介護サービスの他、家事代行サービス・高齢者専用賃貸住宅等の介護保険外サービスへも積極的に参入

MBOを実施したきっかけ

  • 経営は順調であったものの、介護・医療関連の市場で労働人口が減少傾向にあり、自社の迅速な改革も必要と判断
  • 創業者の死亡により、事業承継問題を解決したい

MBOを実施

  • 2020年5月、経営陣がベインキャピタルともに買収開始(最終的に1株1,670円)
  • 同年10月には上場廃止が決定

MBO後の後継者への円滑な事業の引継ぎ、改革による介護部門の収益向上が期待されています。

MBOの失敗事例

MBOを実施し、上場廃止できた会社ばかりでなく、MBOに至らず失敗してしまったケースもあります。

MBOに至らなかった事例を取り上げていきます。

  • 東栄リーファーラインのMBO

東栄リーファーラインのMBO

2018年1月公開買付の応募総数が下限に達しなかったため、いったん公開買付の中止を発表した事例です(最終的には2018年6月で上場廃止が決定)。

東栄リーファーラインの事業

  • 超低温冷凍マグロ運搬業界で漁船主をトータルにサポートする会社
  • 超低温冷蔵船、蓄養まぐろの船上加工、漁船への洋上給油等の支援事業を行う

MBOを実施したきっかけ

  • 経営環境の悪化に苦慮し、2017年度は2,300万円の経常赤字となった
  • 海運事業の衰退等を考慮し、迅速な事業の改革を進めたかった

MBOを実施

  • 2017年11月、経営陣が公開買付けの応募を開始
  • 株主の理解がなかなか得られず、公開買付の応募総数が未達成となりMBOは不成立

なぜ失敗したのか?

株主の理解がなかなか得られなかったのは、次の理由があげられます。

  • MBOを行う目的に市況の変化速度の速さ、漁獲規制・燃料価格の外部要因・海運事業の衰退を挙げたが、業績自体は悪化しているとまでいえなかった
  • 収益の減少は見受けられるが、営業利益・経常利益は比較的安定している

つまりMBOを行ってまで、経営改革をする必要はないと株主から判断されたため、と考えられます。

株主の理解を得るためには会社の危機だとわかるデータ、株主の納得を得られる明確な目的の提示が必要です。

MBOの成功のポイントについて

MBOを行うからには、円滑に進めていきたいものです。

実施する前に考慮しなければいけない点を押さえておきましょう。

  • 株主を納得させる対策の準備
  • MBO後の計画を万全に
  • 事業承継目的なら経営体制の強化を

株主を納得させる対策の準備

MBOには株主の協力が必須のため、株主にMBOの目的・対策を説明します。

株主が納得しないままでは、MBOが全く進展しなくなります。

株主の保有株をどのくらいの値段で買い取るかも重要ですが、MBOを行う理由についてもしっかりと明示しましょう。

  • 自社のどのような部分に問題があり、どんな改革をする必要があるのか
  • 改善のための有効な施策はあるのか

株主に保有株を手放すのは仕方がないと思わせるだけの、説得力のある原因やそれを解決する対策の提示が成功のポイントとなります。

MBO後の計画を万全に

MBOの際に調達した資金の返済計画を、事前にしっかり立てておく必要があります。

経営陣が金融機関から資金を借り入れて、株式を取得した以上、その返済は円滑に行われなければいけません。

返済が滞れば経営の改善や、新規事業の立ち上げ等にも悪影響を及ぼします。

そのためMBOを実施する前に、無理のない返済計画を立てるのが成功のポイントです。

事業承継目的なら経営体制の強化を

中小企業が事業承継目的でMBOを行う際、事前に経営体制の強かを図る必要があります。

そうしないと現経営者が不在になった後、経営陣の意思決定に混乱が生じるケースも想定されます。

社内研修や事業のマニュアル整備、人事評価システムを導入し、MBOの前にワンマン経営から脱却する強固な組織作りを行っておきましょう。

まとめ:MBOは上手く活用すれば有効な事業承継方法になり得る

当記事の内容をまとめます。

  • MBOに成功すれば意思決定をより迅速化し、経営の自由度を高めることが可能
  • MBOの成功事例では事業の構造改革ができ、新規事業で立て直しを図る等の効果が指摘されている
  • MBOの成功には、現状だと会社の成長が難しいという株主の危機感も必要

MBOは、誰にでも当てはまる完璧な事業承継方法とはいえません。

ただし、MBOによって課題が解決できる企業様もいらっしゃいます。

今抱えている課題や何を達成したいかなどをきちんと整理したうえで、MBOなのか、ほかの方法なのかを検討してみるべきだといえるでしょう。