事業承継の手続き|気を付けるべきポイントを知り、正しく準備しよう
✔当記事はこのような方に向けて書かれています
「事業承継の具体的な手続き方法が知りたい」
「事業承継の手続きで気を付けるべきポイントは何だろう」
「事業承継の計画を立てる手順を教えてほしい」
✔当記事を通じてお伝えすること
- 事業承継とは
- 事業承継における3つの手法
- 事業承継で気を付けるべきポイント
当記事では、なぜ事業承継が必要なのかや事業承継で気を付けるべきポイントについて、詳しく解説しています。
ぜひ最後までご覧ください。
事業承継についての基本事項3選
はじめに、事業承継についての基本事項3選について解説します。
事業承継の基本をおさえておけば、自社にとって適切な対策を考えられるからです。
- 事業承継とは?
- 事業承継の目的とは?
- 事業承継で引き継ぐものとは?
事業承継とは?
事業承継とは、事業を現在の経営者から後継者に引き継ぐことです。
さまざまな理由がありますが、事業を行っている限り、どこかのタイミングで次世代に引き継ぐことになります。
事業を継続させることは、経営者にとって最も重要な課題であるため、じっくりと検討した上で計画を立てておく必要があります。
事業承継の目的とは?
事業承継の目的は、事業を存続させることです。
会社ないし個人事業が存続すれば、日本経済にとってプラスの影響があるからです。
例えば、企業が事業を行うことで経済が活発になりますし、従業員を雇うことで従業員の生活も守られます。
少子化が進んでいる現代だからこそ、事業承継は大きな意義があると言えます。
事業承継で引き継ぐものとは?
事業承継で引き継ぐものは会社の資産であり、「無形資産」と「有形資産」の2つに分けられます。
例えば、無形資産には経営ノウハウやリーダーシップ、人脈などであり、有形財産には会社の株式や不動産、経営のために投入した経営者の個人資産などがあげられます。
円滑に事業承継を進めるためには、これらの資産の適切な引き継ぎ方をじっくり検討することが重要です。
日本の企業が事業承継に迫られている理由5選
次に、日本の企業が事業承継に迫られている理由5選について解説します。
事業承継が起こる背景を確認しておくと、必要な対策が考えられるからです。
- 経営者の高齢化
- 多くの企業が同族経営
- 後継者の育成に時間がかかる
- 株の引き渡しには準備が必要
- 社員・取引先が不安解消
経営者の高齢化
1つ目に、経営者の高齢化があげられます。
少子化により人口が減少しているため、後継者不在の問題に直面している経営者も少なくありません。
事業承継には相応の時間と労力がかかるため、経営者の健康面に不安が出てくる前から計画しておく必要があります。
多くの企業が同族経営
2つ目は多くの企業が同族経営であることです。
同族経営では一族の中から後継者を選ぶため、候補者が少なく事業承継が進みづらい場合があります。
なお、同族経営では歴代の経営者が個人資産を投入しているパターンが多いことも、事業承継が難航する理由であるといえます。
後継者の育成に時間がかかる
後継者の育成に時間がかかることも大きな要因です。
後継者が決まっても、すぐに経営者としての役割を十分に果たせるわけではないからです。
早い段階で後継者について話し合い、本人を説得できれば以下のような方法でスムーズに教育を進められます。
- 後継者として入社し、現経営者のもとで実務を学ぶ
- 講座や研修で経営に必要なノウハウを身に着ける
株の引き渡しには準備が必要
株の引き渡しには準備が必要なことも理由の1つです。
株式の評価を行い、適切な価格で譲渡しなければならないからです。
株式の評価は会社の規模によって異なりますし、譲渡に多くの資金が必要な場合は別途対策をとる必要も出てきます。
専門的知識が必要になるため、経験豊富な税理士や金融機関などの専門家に時間をかけて相談するのが有効です。
社員・取引先の不安解消
社員や取引先の不安を解消することも大切なポイントです。
中小企業や個人事業では、経営者がかなりの影響力をもっているからです。
事業承継により想定される不安要素は以下があげられます。
- 現社長と同じように対応してもらえるか
- 後継者の知識やスキルは問題ないか
上記の不安を解消するには、早めに後継者が入社し、社内外に周知することが有効です。
後継者と認識され信頼関係を築ければ、不安の払拭につながります。
事業承継での3つの選択肢
事業承継方法についての3つの選択肢を見ていきましょう。
事業承継では、以下の3つが主な手法です。
- 親族内承継
- 社内承継
- 外部への売却
会社の株式を誰に渡すかにより、取るべき手続きや方法が異なるのです。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
事業承継における株式譲渡の重要性|株式譲渡3つの方法やその手順を解説
事業承継の手続きで気を付けるべきこと
次に、事業承継の手続きで気を付けるべきことについて解説します。
あらかじめ注意点を確認しておけば、円滑に手続きができるからです。
- 株式を分散させない
- 後継者選びと育成
- 社員・取引先への通知のタイミング
- 国や自治体の制度を活用する
- 非常事態に備えて複数案用意する
株式を分散させない
はじめに、株式を分散させないことです。
株式を分散してしまうと、経営者単独で重要事項を決められなくなるからです。
例えば、株主総会では、普通決議で議決権の過半数、特別決議で議決権の3分の2の同意が必要です。
経営に関することを迅速に判断し決定するためにも、株式は後継者が単独ですべて取得することが望ましいといえます。
後継者選びと育成
後継者を選び、次期経営者として育てていくことも重要です。
どちらも相応の時間と労力がかかるからです。
経営者の子供が複数いる場合は子供同士出揉める可能性もありますし、後継者の経験やスキル、性格によっても必要な教育は変わってきます。
後継者は会社の今後を左右する重要なポジションなので、事業承継が発生する前から育成に着手する必要があります。
社員・取引先への通知のタイミング
社員や取引先へ知らせるタイミングにも配慮する必要があります。
適切なタイミングで通知できれば、両者との良好な関係を維持することにつながるからです。
例えば、事業承継が決定した段階で通知してしまうと、計画が実行できない事情が発生した場合、関係者に混乱を招きかねません。
そのため、事業承継が完了したタイミングでの通知が望ましいと言えます。
国や自治体の制度を活用する
国や自治体の制度の活用も検討したいところです。
上記を活用できれば、事業承継にかかわる費用をおさえることができるからです。
活用できる制度としては、以下があげられます。
- 国の事業承継税制の特例
- 各自治体の事業承継関連の補助金
事業承継税制の特例は相続税や贈与税が猶予されますし、各自治体の制度では補助金が出ます。
それぞれ条件が定められていますので、専門家に相談しながら検討することが大切です。
非常事態に備えて複数案用意する
事業承継に関するプランを複数用意しておくことも大切です。
非常事態が起こると、予定していた方法で事業承継ができないケースがあるからです。
例えば、事業を引き継ぐ前に社長に万が一のことがあった場合は、事業承継ではなく相続手続きが必要になります。
事業承継計画と並行して、現経営者の相続対策も進めておくと、さまざまなパターンに対応できます。
事業承継計画を立てる手順
最後に、事業承継計画を立てる手順について解説します。
具体的な流れが確認できれば、計画の立案やスケジュールの調整に役立つからです。
- 後継者を選ぶ
- 現状を把握する
- 会社の将来像を明確にする
- 事業承継の計画を立てる
後継者を選ぶ
はじめにやることは、後継者選びです。
同族企業であれば、現経営者の子供や親族が後継者になることが一般的ですが、適任者がいない場合は従業員や社外の第三者を選ぶパターンもあります。
後継者選びは今後の経営に大きな影響を与えます。
さまざまな方向から比較検討し、経営者としての役割を果たせる人物を選びましょう。
現状を把握する
後継者が決まったあとは、社内の現状を把握します。
現在の状況が把握できれば、適切な承継方法を判断できるからです。
確認するおもな項目は、以下の通りです。
- 経営資源
- 経営リスク
- 経営者・後継者の状況
上記の項目はどれも事業承継計画を立てる上で欠かせません。
会社の現状だけでなく、経営者と後継者個人の財産状況も確認しておけば、相続対策もできるといえます。
会社の将来像を明確にする
現状の把握ができたら、会社の将来像を明確にします。
ビジョンが明確になれば具体的な目標に落とし込むことができ、後継者への事業承継が円滑に進むからです。
例えば、将来の売上高や利益など、数値化できる目標を中長期で設定すれば、後継者も達成に向けてやるべきことが見えてきます。
ビジョンを社内に浸透させるためにも、計画の段階でしっかりきめておきましょう。
事業承継の計画を立てる
最後に、事業承継の計画を立てます。
経営に関する課題や必要な対策を当事者同士で共有でき、スムーズに事業承継の手続きが進められるからです。
また、一定の条件を満たした場合は、前述した事業承継税制の特例や自治体の補助金の対象となる場合もあります。
事業承継は会社にとっての節目であるからこそ、入念に計画する必要があります。
まとめ:事業承継の手続きはポイントを抑えて正しく準備しよう
当記事の内容をまとめます。
- 事業承継とは、株式を譲渡し、経営権を引き渡すこと
- 事業承継方法は複数あるので、正しいものを選ぶべき
- 事業承継では気を付けるべきポイントをおさえて、正しく準備する
事業承継の手続き方法は、取る手法により多少異なります。
どの方法を選ぶにも、準備期間がとても大切。
方法選びはもちろん、どのような準備をすべきかで迷ったら、お気軽にご相談ください。