ホールディングス化のメリット・デメリット、やり方を丁寧に解説
✔当記事はこのような方に向けて書かれています
「ホールディングス化って何?」
「ホールディングス化のメリット・デメリットが知りたい」
「ホールディングス化をすべきなのか判断ができない!」
✔当記事を通じてお伝えすること
- ホールディングス化とは?
- ホールディング化のメリット・デメリット
- ホールディングス化をすべきかの判断材料
当記事では、ホールディングス化とは何かやそのメリット・デメリットはもちろん、ホールディングス化すべきかの判断ができるよう解説を進めていきます。
ぜひ最後までご覧ください。
ホールディングス化の基本情報
ホールディングス化について基本をお伝えします。
ホールディングス化をすべきかの判断において、その定義を明確に理解しておく必要があるからです。
- ホールディングス化とは?
- 持株会社3種類の特徴
- ホールディングス化と組織再編の違い
ホールディングス化とは?
ホールディングス化とは、複数社の株を持株会社に統一すること。
株を一社に集中することで、管理体制を整えつつも、子会社の役割分担を明確にできます。
具体的には、その持株会社を親会社として、子会社を支配・管理する組織形態になることです。
持株会社は、「ホールディングス」や「ホールディングカンパニー」とも呼ばれます。
持株会社3種類の特徴
持株会社3種類の特徴について解説していきます。
同じ持株会社とはいえ、それぞれ特徴が異なるので理解しておきましょう。
- 事業持株会社
- 純粋持株会社
- 金融持株会社
事業持株会社
事業持株会社とは、子会社を管理する一方で、自らも直接事業を手がける会社のことをいいます。
子会社とは主従関係にあり、子会社の株式から得られる配当金と、自らの事業で得られる収益を収入源とします。
事業持株会社の例としては以下のとおり。(出典:純粋持株会社と事業持株会社の戦略的活用)
- 雪印メグミルク株式会社
- 双日株式会社
- 株式会社アダストリア
純粋持株会社
純粋持株会社は、子会社の株式保有と子会社の管理を目的とした持株会社です。
自らは事業を営まずに、子会社の管理に専念できるのが特徴。
売上の大半は、子会社からの配当金です。
子会社に対して明確に管理業務をおこなっている場合は、前述した事業持株会社に該当します。
金融持株会社
金融持株会社とは、持株会社が金融機関である場合をいいます。
「金融持株会社(フィナンシャルグループ)」とも呼ばれ、代表的な金融持株会社には、以下の3行が挙げられます。
- 三井住友銀行
- 三菱UFJ銀行
- みずほ銀行
新たに企業を設立することになるため、純粋持株会社のひとつに分類されることも。
ホールディングス化と組織再編との違い
ホールディングス化と組織再編の違いは、持株会社を中心とした組織を作るかどうかにあります。
なぜなら、組織再編は組織を分解しあらたに組み直すことで、ホールディングス化においても必要な手法だからです。
組織再編をしても、持株会社を作らないのであればそれは、ホールディングス化ではなく、単なる組織再編といえます。
ホールディングス化のメリット
ホールディングス化には多くのメリットがあり、経営戦略の観点から見ると有効な手段であるといえます。
とくに大きなメリットは、以下の3つです。
- 事業承継対策ができる
- 役割の効率化が図れる
- 労働環境の改善に繋がる
事業承継対策ができる
ホールディングス化をすると、事業の承継がしやすくなります。
なぜなら複数社の株を持株会社一社にまとめられるから。
具体的には、一社に株がまとまっていることで以下のような場面で有利です。
- M&Aで株を売買するとき
- 相続や贈与時に引き継ぐとき
引き継ぐ手間だけでなく、相続税や贈与税が少なくなるケースもあります。
事業承継はホールディングス化のメリットといえるでしょう。
役割の効率化が図れる
ホールディングス化を導入することで、役割の効率化が図れます。
役割分担により、それぞれのやるべきことが明確になるためです。
やるべきことが明確になれば、持株会社は経営に専念でき、子会社はそれぞれの事業に専念できるようになります。
結果的に、迅速な意思決定が可能となり、経営効率の向上にも期待が高まります。
労働環境の改善に繋がる
ホールディングス化は、労働環境の改善にも繋がります。
それぞれの事業に応じた労働条件を柔軟に取り入れられ、社員にとってより良い労働環境を提供しやすくなるためです。
中間管理職などのポストが増えれば、社員にチャンスを与えることにも繋がります。
社員のモチベーションアップやスキルアップにも繋がり、離職率の低下や業務成績の向上にも期待ができます。
ホールディングス化のデメリット
ホールディングス化にはメリットも多いですが、デメリットも存在します。
メリットだけでなくデメリットもしっかり理解したうえで、ホールディングス化を取り入れるかどうかを判断してください。
- グループ間で連携が取りにくくなる
- コストが増加する可能性がある
- 売り上げのバランスが悪くなる
グループ間で連携が取りにくくなる
グループ間での連携が取りにくくなることがデメリットとして挙げられます。
なぜなら、今まで同じ組織下にいた部署が別会社となることで、方向性が異なってくることがあるからです。
方針が一致せず対立してしまったり、コミュニケーション不足により意思の疎通が取りにくくなったりすることが起こりえます。
ホールディングス化前後での関係によってくるでしょう。
コストが増加する可能性がある
ホールディングス化により、コストが増加する可能性があります。
なぜなら子会社が増えることで、その分経理や財務などのバックオフィス業務が増えることが考えられるからです。
増えた業務に対して、新たに社員の補充が必要になります。
ホールディングス化導入後、効率化などの成果が出るまでは、ランニングコストがかかってくることを頭に入れておきましょう。
売上のバランスが悪くなる
売上のバランスが悪くなる点もデメリットとして挙げられます。
純粋持株会社は自ら事業を展開しないため、売上はもっぱら子会社からの配当金頼りです。
子会社の業績次第では収益が得られず、投資家に配当できないという事態に陥る可能性があります。
また、配当金が益金不算入となると多くの場合税金が発生しませんが、子会社のほうでは利益が出るため、法人税の支払いが発生します。
グループ全体で見たときに、売上に対して税金が多く流出してしまう可能性がある点はデメリットといえるでしょう。
ホールディングス化に適しているかの判断基準
ホールディングス化に適しているかどうかの判断基準をお伝えします。
どんな会社でもホールディングス化すべきなわけではないからです。
判断基準として、以下を参考にしてください。
- 年商30億円以上である
- 複数の事業を手がけている
- 拠点が複数存在し、商圏を跨いで展開している
- 経営に関わっていない、後継者候補以外の株主が存在する
- 重要なポストに就かせることを検討できる、同族以外の社員が存在する
- 関連会社を2社以上所有している
これらはあくまでも目安ですが、多く当てはまるようであれば検討するのもありかもしれません。
詳しくはお近くの専門家、または以下までお問合せください。
ただし、ホールディングス化はゴールではなくスタートであり、メリットだけではなくデメリットも把握したうえで進めることが重要です。
ホールディングス化を成功させるためにも、いろいろな角度から検討し、答えを出すべきだといえるでしょう。
ホールディングス化した企業の事例集
ホールディングス化した企業の事例を見ていきます。
事例を見ることで、どのようなケースで良かった・悪かったが判断できるようになるでしょう。
- ホールディングス化の成功事例
- ホールディングス化の失敗事例
ホールディングス化の成功事例
こちらは、オーナー一族がA社、B社の株式を保有していた事例です。
手順は以下のとおりでした。
- オーナーの一族で分け合って保有していた株式を後継者へと集約
- 親会社となるA社に、本社であるB社の機能を移転
- A社はホールディングス企業としての機能を取得
- B社には営業部門、サービス部門を残していたため、事業会社として事業に専念
- B社とは別に新会社を設立
- B会社から新会社にサービス部門を移転
以降B社は営業部門、新会社はサービス部門を担うことになり、部門ごとに法人を分けたことによって、それぞれが事業活動に集中できる環境に。
これはグループ全体として効率的な経営が実現した、ひとつの成功例です。
ホールディングス化の失敗事例
ホールディングス化に成功するケースばかりではなく、中には失敗例もあります。
それは以下のようなケースです。
- 株価対策ばかりにとらわれてしまったがために、本来しっかりと設計すべきはずだった機能や役割が曖昧になり、結果的にペーパーカンパニーになってしまった。
- 営業に必要な許認可の移転手続きを失念していたために、業務を停止せざるを得なくなってしまった。
どちらも、ホールディングス化の前にしっかりとスキームを検討していれば、こういった事態は避けられたかもしれません。
ホールディングス化を検討するうえでは、本当に最適な判断であるのかどうかを、税務、労務、財務、法務などのさまざまな視点から考えていく必要があります。
ホールディングス化の方法とは?
ここでは、ホールディングス化するための3つの方法をご紹介します。
それぞれ特徴があるので、理解しておきましょう。
- 会社の分割による方法
- 株式の交換による方法
- 株式の移転による方法
会社の分割による方法
会社の分割による方法を、会社分割方式といいます。
既存の会社を複数の会社に分け、新たに設立した子会社に既存会社のすべての事業を移転します。
純粋持株会社を設立する際に用いられる方法で、事業移転後、親会社には子会社の株式だけが残ることから「抜け殻方式」と呼ばれることも。
株式の交換による方法
株式の交換による方法を、株式交換方式といいます。
親会社となる会社が子会社の株式をすべて取得し、その対価として、親会社の株式や有価証券を子会社に対して交付します。
子会社となる会社の株主のうち、3分の2の賛成を得られれば実行でき、株式の交付によって実施できるため、現金の準備が要りません。
株式の移転による方法
株式の移転による方法を、株式移転方式といいます。
既存会社が保有する株式を新設した持株会社にすべて移転するため、既存会社は子会社となります。
既存会社への影響を最小限に抑えられ、事業の許認可などを改めて取得する必要がないため比較的スピーディです。
まとめ:ホールディングス化が唯一の方法ではない
当記事の内容をまとめます。
- ホールディングス化とは、組織再編をして、持株会社のある体制にすること
- ホールディング化のメリット・デメリットをそれぞれ理解しておこう
- ホールディングス化の手法は、一人で決めずに相談すべき
ホールディングス化は、ひとつの有効な事業承継対策です。
ただし、誰にでも当てはまる完璧な方法ではありません。
会社の状況や今後の展望などにより、ホールディングス化すべきかが決まるのです。
まずは現状と将来をもう一度考えて、何が良いのかを検討してみましょう。