DCF法とは?活用するメリット・デメリットや計算方法を解説します
✔当記事はこのような方に向けて書かれています
「投資で将来どのくらいお金が戻ってくるかを予測したい」
「買収先(売り手)企業のフリーキャッシュフローを評価したい」
「株式市場の相場変動へ影響されずに、企業の価値判断を行いたい」
✔当記事を通じてお伝えすること
- DCF法とは
- DCF法計算の流れ
- DCF法の活用方法
当記事では、DCF法の評価方法だけでなく、どんな場面で活用できるのかまでご理解いただけます。
ぜひ最後までご覧ください。
DCF法は将来も想定した株価を算定する評価方法
DCF法は企業価値を算定する方法です。
その算定には、企業が生み出すキャッシュフローも考慮されます。
- DCF法とは?
- DCF法の計算方法
DCF法とは?
DCF法とは、以下のとおり。
企業価値 = 株主・債権者に分配できる現金 × 現在価値に直すための割引された掛け値
なぜこのように算出するのかと言うと、今の価値としてでてきた金額も、将来的にはさまざまな要素により、変動する可能性があるから。
例えば、3%での利回りが期待できる金融商品であれば、今の100万円も1年後には103万円の価値があります。
期待値やリスクを加味して、現在価値を算出するのがDCF法です。
DCF法の計算方法
計算方法は以下の流れです。
- 株主・債権者に分配できる現金(フリーキャッシュフロー)を算出
- 加重平均資本コスト(WACC)で掛け値を算出
- 1と2により、企業価値をけいsんスル
評価する割引現在価値が大きければ大きいほど、将来に会社の獲得する利益が多いと判断できます。
DCF法のメリット・デメリット
DCF法は会社の将来性を加味して算定されるので、期待されている企業には有利な評価方法です。
一方で将来性を加味する以上、気を付けなければいけない点もあります。
DCF法の利点や注意すべき点を見ていきましょう。
DCF法のメリット
会社の将来の価値がどうなるか気になる場合、最適な評価方法です。
なぜなら、現在の資産が少なくても予想される収益を参考に評価するので、将来得られる利益を具体的な金額で把握できます。
そのため、DCF法の評価に向いているのは規模が小さく、まだ目立った実績がないものの、将来が大いに期待できる会社といえます。
DCF法のデメリット
将来性を予測した評価のため信頼性に乏しいと、他社等から判断されてしまう場合があります。
DCF法は将来性の予測である以上、算出した人ごとに大きく数値が異なるケースも想定されます。
そのため参考に使用する事業計画が、より客観的であるか否かが求められます。
DCF法を計算する流れについて
DCF法で企業価値を算出する流れを見ていきます。
なぜなら、DCF法による企業価値評価は、さまざまなデータが必要だからです。
- 予測期間の決定
- 損益計算書・貸借対照表の作成
- 予測期間内のフリーキャッシュフロー算定
- 割引率の算定
- 残存価値の算定
- 事業価値・企業価値・株式価値・株価を算定
予測期間の決定
予測期間の決定をする必要があります。
予測期間の設定は法律等で決まっておらず、算定する人が自由に設定できます。
一般的にいわれているのは、10年を超える長期の予測数値は正確性に欠けるおそれがあるということ。
設定するなら10年以内の期間が妥当でしょう。
損益計算書・貸借対照表の作成
予測期間を決定後、損益計算書・貸借対照表を作成します。
参考にする書類は次の通りです。
- 有価証券報告書:各事業年度に作成する企業内容を外部へ開示するための資料
- 決算短信:上場企業が決算・四半期決算の発表時、決算内容の要点をまとめた書類
- 年次報告書:経営戦略や財務状況、将来のビジョン等を記載した報告書
- 統合報告書:自社の売上・資産をはじめとした財務情報等がまとめられた報告書
- 株主通信:企業が株主へ発行する報告書
これらの書類をもとに、予測期間内の損益計算書・貸借対照表をつくります。
予測期間内のフリーキャッシュフロー算定
予測期間内のフリーキャッシュフロー(FTF)を次の計算式で求めます。
FCF=NOPLAT(みなし税引後営業利益)+減価償却費-設備投資額±運転資本増減額
NOPLATは「NOPLA=EBIT×(1-実効税率)」と計算します。
事前にEBIT(利息及び税金控除前利益)は、「EBIT=税引前当期純利益+支払利息-受取利息」で計算しておきます。
専門的で難しいという方はぜひ以下にて、ご質問・ご相談ください。
割引率の算定
将来受け取るお金を現在価値に割り引くため、1年あたりの割合を算定します。
必要なのは株主資本コスト・有利子負債コスト・WACCの算定です。
株主資本コスト
株主が企業に求める期待収益率(リターン)を算定します。
計算式は次の通りです。
株主資本コスト=安全資産の利子率+β×マーケットリスクプレミアム
- 安全資産の利子率:国債(10年もの)を主に利用
- β値:日経電子版・ロイターを参考に株価・TOPIX指数等で算定(上場企業の場合)
- マーケットリスクプレミアム:株式市場全体の利回りと国債の金利との差、主に3~6%で評価する
そのため、計算する前に国債の金利を良くチェックします。
有利子負債コスト
債権者が企業に求める期待収益率(リターン)を算定します。
計算式は次の通りです。
有利子負債コスト=支払利息/有利子負債の期中平均
金利・社債利息等を参考に計算します。
WACC
資金を1円調達するのに、いくらのコストがかかっているかを示す資本コストについて算定します。
計算式は、算定した株主資本コスト・有利子負債コストを加えます。
WACC(割引率)=株主資本/(有利子負債+株主資本)×株主資本コスト+有利子負債/(有利子負債+株主資本)×有利子負債コスト×(1-実行税率)
- 株主資本:類似上場企業の株式時価総額を利用
- 有利子負債:基本時価を利用するが、簿価でも可能
残存価値の算定
減価償却が終了した時点で、自社が有する資産の処分価値の見積額を算定します。
残存価値の計算式は「予測期間終了時点のFCF×(1+継続成長率)/WACC-継続成長率」です。
- 予測期間終了時点のFCF:例えば予測期間が10年ならば10年目のFCFで計算
- 継続成長率:概ね0~1%で設定
事業価値・企業価値・株式価値・株価を算定
まず事業価値を「株式時価総額+純有利子負債(=有利子負債-余剰資金-非事業性資産等)」で算定します。
次に企業価値・株式価値を計算します。
- 企業価値=事業価値+非事業価値
- 株式価値=企業価値-有利子負債
その後、株価を「株式価値/発行済株式数」で計算し終了です。
なお、発行済株式数は自己株式数を除きます。
DCF法による企業価値の計算事例
さまざまなデータをもとに企業価値を算定します。
- 1~5年目の計算式:FCF/(1+割引率)^(年数)
- 6年目以降:{5年目のFCF(1+永久成長率)/(割引率+永久成長率)}(1+割引率)^5
事例をあげ計算してみましょう。
- 予測期間:5年間
- 割引率:10%
5年間のDCFを計算します(単位:百万円)。
- 1年目:500/(1+0.1)=455
- 2年目:600/(1+0.1)(1+0.1)=496
という形で計算すれば下表の通りになります。
年数 | FCF(フリーキャッシュフロー) | DCF(現在価値) |
---|---|---|
1年目 | 500 | 455 |
2年目 | 600 | 496 |
3年目 | 700 | 526 |
4年目 | 800 | 546 |
5年目 | 900 | 559 |
合計 | 2,582 |
5年間でのDCF合計は約25億円と算出できます。
※こちらはあくまでも一例です。ご質問などございましたらこちらまで。
DCF法は主にM&Aや不動産投資へ活用できる
DCF法は将来どのくらいの収益を見込めるのか、気になる分野の評価方法に活用されます。
いずれのケースでも説得力のある評価が求められます。
どのような活用法があるのかを見ていきましょう。
DCF法とM&A
会社の株式・事業を買収する際に活用されます。
なぜなら、M&Aは将来に収益の増大が見込めないと失敗する可能性もあるからです。
DCF法は売り手(買収を望む会社)の現在の収益率があがっていない状態でも、今後の成長を事業計画に現しやすい特徴があります。
そのため、DCF法は成長の見込めるベンチャー等が自社の評価を表示する際に有利です。
DCF法と不動産投資
金融機関が不動産に関する融資審査の評価方法として、最適と言われています。
なぜなら、金融機関が融資の審査をする際、一番知りたいのは収益不動産が将来に期待通りの収益をもたらすか否かだからです。
DCF法ならば将来の収益予測を盛り込んだ物件評価ができるので、金融機関側も評価を考慮し安心して融資ができます。
まとめ:DCF法を活用して、企業価値を計算してみよう
当記事の内容をまとめます。
- DCF法は将来に生み出すフリーキャッシュフローの推計も参考として評価する方法
- DCF法は将来のキャッシュフローを企業が見積った後、それを割引率で除して算出する
- 将来に得ると予想されるキャッシュフローを評価で使用するので、算出する価値に開きが生じるおそれもある
DCF法を含め、企業価値の算出はとても難しいです。
もし企業価値を知りたいのであれば、身近で実績のある専門家に頼みましょう。
西山税理士事務所でも、事業承継を始めとした実績が豊富なことから、さまざまなご相談を承ります。
いつでもお気軽にご連絡ください。