【現役税理士が徹底解説】クリニックの現状や閉院の理由やその対策
✔当記事はこのような方に向けて書かれています
「閉院するクリニックって増えているのだろうか?」
「閉院しないためにはどのような対策があるのか知りたい」
「閉院を考えているときにやるべきことが何だろう?」
✔当記事を通じてお伝えすること
- クリニックが閉院する理由
- クリニックが閉院しないための対策
- クリニックが閉院するときにやるべきこと
当記事では、クリニックの現状や閉院してしまう理由だけでなく、閉院しないための対策や閉院するときにやるべきことを解説しています。
ぜひ最後までご覧ください。
クリニック閉院の現状
クリニックは都市部に集中し競合が激しくなっている一方で、地方では慢性的な医師不足に悩まされ廃業や退去に追い込まれています。
帝国データバンクによると、2021年のクリニックの休廃業や解散は過去最高の471件というデータ結果が出ており、この数は同年に倒産したクリニックの何と21.4倍にも上ります。
財政的には問題がないのに、閉院しなければならないクリニックが増えているのです。(出典:医療機関の休廃業・解散、5 年で 3 倍に急増|帝国データバンク)
閉院の理由3選
クリニックが閉院してしまう理由をご説明します。
2021年度のクリニックの休廃業や解散が過去最高水準となったという帝国データバンクの調査がありますが、倒産件数は減少しています。
先述した通り、財務状況の悪化ではない別の理由もあるということです。
- 院長の小売絵により継続できない
- 後継者がいない
- 経営が悪化している
院長の高齢により継続できない
まず一つ目に上げられるのは、院長の高齢化です。
帝国データバンクによると、2021年度時点の診療所の代表者の年齢は以下のとおり。
- 70代が42%
- 60代が40.5%
クリニックのほとんどの代表者が60代以上ということになり、70代を迎えると引退を考え始めるようです。
後継者がいない
次に挙げられるのは、後継者がいないという場合です。
子供がいない、または子供がいても医師ではないといったパターン。もしくは、子供は医師でも専門分野が違う、勤務医として働きたい、大学病院を離れたくないといった理由で、親の病院を継がない場合があります。
経営が悪化している
3つ目は、経営の悪化です。
1985年から医師一人でも医療法人を設立できるようになり、ベッドのないクリニックが増えました。
当時は積極的に広告しなくても患者が集まっていた診療所も、競合が増えたり、コロナ禍で状況が変わったりして経営が悪化してきたのです。
収益が減っても、賃料や人件費は変わらず毎月発生するため赤字になってしまいます。
その結果、継続が難しくなり、廃業を余儀なくされているのです。
閉院しないための対策2選
それでは、クリニックが閉院に追い込まれないためにはどうすれば良いのでしょうか?次に、閉院を回避するための対策を2つご紹介します。
- 承継先を見つける
- 経営を見直す
承継先を見つける
閉院しないための対策として、まず挙げられるのは承継先を見つけることです。
承継先には3パターンあります。
- 親族に継いでもらう
- 親族以外の第三者に継承する
- M&Aでクリニックを売却する
親族に継いでもらう
継承先として一番多いのは、子供等の親族でしょう。
開業医の子供は親と同様に医師を目指す場合が多く、いつかは子供に継いでほしいと願っている開業医は少なくありません。
その一方で、勤務医を望む若い医師が増え、親族内事業承継は減少傾向にあります。
親族以外の第三者に承継する
続いては、親族以外の第三者に承継するというもの。
子供が継いでくれれば良いですが、例えば子供が医学部に入学できなかった、子供にクリニックを継ぐ意思がないということもあります。
そういった場合には、選択肢として副院長等第三者への承継が考えられます。同じ診療所で勤務している医師が後継者となれば、現状が分かっているため引き継ぎがスムーズなうえに、院長の意思を受け継いでくれる可能性が高いでしょう。
M&Aでクリニックを売却する
その他に、M&Aでクリニックを売却するという方法があります。
仲介会社に後継者となる法人や個人を探してもらい、診療所を売却するのです。M&Aの専門家の広いネットワークから後継者を見つけることができ、承継手続きを専門家に任せられるというメリットもあります。
また閉院のコストがかからない上に、クリニックの譲渡益や営業権といった利益も得られます。
経営を見直す
閉院を回避するための対策として、経営を見直すというもの。
現状を見直して、クリニックの経営を安定化させます。まずは無駄な経費の削減です。
患者やスタッフの満足度につながらない経費から減らしていきましょう。
次に、収益を上げるために患者数を増やすことに専念します。
ホームページやSNSなどインターネットを駆使しながら、患者が求めている情報をどんどん発信していくのが効果的です。
閉院時にやらなくてはならないこと5選
閉院時にやらなければいけないことをご紹介します。
なぜなら、業務を停止しただけでは閉院はできないからです。
- 設備を譲渡もしくは廃棄
- 保健所等に廃止届を提出する
- カルテの保管(医師法24条)
- 放射線障害についての測定結果記録の保管
- 承継者や患者への引き継ぎ(承継する場合)
設備を譲渡もしくは廃棄
所有している医療機器や医薬品を処分する必要があります。医療機器や医療品は売却することができますが、売却できなかった場合は廃棄処理業者に委託、もしくは産業廃棄物処理業者に有料で引き取ってもらいます。最終的な処分義務は所有していたクリニック側に生じるため、後々のトラブルを避けるためにも処分証明書の発行をしてくれる業者を選ぶのが重要です。
保健所等に廃止届を提出する
クリニックを閉院するには、様々な申請手続きをしなければいけません。
保健所へは診療所廃止届とエックス線廃止届、地方厚生局には保険医療機関廃止届、都道府県には麻薬施用者業務廃止届を提出する必要があります。
その他にも、福祉事務所や医師会、税務署、医師国民健康保険組合、年金事務所、労働基準監督署など多くの申請手続きが発生するので、専門家に委託した方がスムーズでしょう。
カルテの保管(医師法24条)
クリニックの閉院手続きが完了しても、引き続き院長にはカルテを保管する義務があります。医師法24条により、患者のカルテを過去5年間保管しなければならないのです。さらに、保険医療機関および保険医療機関療養担当者規則により、レントゲンフィルム等のデータは診療が終了してから3年間の保管が必要です。
放射線障害についての測定結果記録の保管
エックス線装置の測定結果記録や放射線障害が発生する可能性のある測定結果記録は、医療法施行規則第30条の21と22により、5年間保管する必要があります。さらに、患者とのトラブル時の損害賠償請求は10年間有効なため、そこまで保管しておいた方が安全かもしれません。重要書類や診療記録は、厳重に保管しておく必要があるということです。
承継者や患者への引き継ぎ(承継する場合)
承継する場合は、患者が引き続き同じ治療を受けられるようにカルテ等のデータを引き継ぎます。また、承継者にはクリニックの理念や診療スタイルなどを理解してもらうことも大切です。理念が大きく変わってしまうとトラブルが発生しやすく、患者もスタッフも困ってしまう可能性があるからです。
まとめ:
ここまで、クリニックの閉院の現状や理由、閉院を避けるための対策、閉院せざるをえなくなった場合にやらなければならないことについて解説してきました。
今後、さらにクリニックの休廃業や解散は増える傾向にありますが、早めに方針を決定し対策を打つことが大切です。
さらに、スタッフや患者にとってベストな方法を見つけることが重要といえるでしょう。