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事業売却の方法とは?おこなうべきタイミングやその手順について解説

✔当記事はこのような方に向けて書かれています

「事業の売却をしたい」

「事業の売却ってどうやれば良いのだろうか」

「事業売却で気を付けることを知りたい」

✔当記事を通じてお伝えすること

  • 事業売却とは?
  • 事業売却をおこなう理由
  • 事業売却をおこなう方法

当記事では、事業売却の方法はもちろん、事業売却をおこなうべきタイミングやそのメリット・デメリットまでご理解いただけます。

ぜひ最後までご覧ください。

事業売却の正しい定義

はじめに、事業売却の正しい定義について解説します。

会社分割との違いも含めて整理しておくと、事業売却の特徴がつかめるからです。

  • 事業売却とは?
  • 会社分割とは?事業売却との違いについて
  • 会社の合併と分割の違い

事業売却とは?

事業売却とは、会社が営んでいる事業の一部または全部を第三者へ譲渡することです。

売却できる事業には、不動産や工場などの有形資産や、ブランドやノウハウといった無形資産も含まれます。

当事者間で話し合い個別契約で手続きを進めるので、両者で合意さえできれば、必要な部分のみの売却も可能です。

事業売却後は、新たに会社と従業員の間で雇用関係が発生するため、再度雇用契約を結ぶ必要があります。

会社分割とは?事業売却との違いについて

会社分割とは、会社を事業ごとに分割して引き継ぐ方法で、吸収分割と新設分割の2通りがあります。

買い取る側が既存の会社か、新設会社かという違いはありますが、どちらの場合でも事業をそのまま移転することが可能です。

また、会社法上の組織再編行為に該当するので、一度の契約で会社が所有する資産すべてが包括的に引き継がれます。

事業売却とは実務上の手続きが異なるため、以下の点に注意が必要です。

  • 会社分割を債権者に通知し、債権者からの異議申し立てを受け付ける必要がある
  • 新たに雇用契約を結ぶ必要がない

会社の合併と分割の違い

会社分割と合併は、包括的に組織を引き継ぐ行為という点は共通していますが、それぞれ違いがあります。

会社分割は会社を事業ごとに分割して引き継ぐのに対し、合併は会社全体を引き継ぐという特徴があるからです。

例えば、会社分割では継続したい事業を残す選択もできますが、合併の場合はこのような対応は認められません。

事業売却を行う際は、複数の方法を比較検討したうえで、自社に最も合った方法を選択する必要があります。

事業売却をおこなう理由4選

次に、事業売却をおこなう理由について解説します。

事業を受け渡す方法はいくつもありますが、売却には特有のメリットがあるのです。

  • 社員の雇用を維持・確保したい
  • 売却益を得たい
  • 経営を効率化したい
  • 事業を再生・復活させたい

社員の雇用を維持・確保したい

1つ目に、社員の雇用の維持・確保があげられます。

経営者にとって、従業員の雇用の確保は従業員家族の生活の安定にもつながるからです。

事業売却にあたり当事者間で交渉をする際も、従業員の雇用の維持を条件に組み入れる場合が多いと考えられます。

従業員を新たに雇い、一から教育するのには相応の時間と労力がかかります。

買い手側にとっても既存の従業員を引き継ぐほうがメリットがあるのです。

売却益を得たい

2つ目に、売却益を得たいという理由があげられます。

事業売却で得た利益で、新たに投資ができるからです。

例えば、組織再編や新規事業の開拓などがあげられます。

売却益を得ながら必要な投資ができる点は、事業売却のメリットだといえます。

経営を効率化したい

3つ目の理由は、経営の効率化です。

採算が取れない事業を売却できれば、利益率の向上につながります

例えば、売却した事業の管理費や人件費の負担が減った分、注力したい事業に経営資源を移すことができます。

事業売却は経営の効率化にも有効です。

事業を再生・復活させたい

4つ目は、事業の再生・復活です。

事業の再生・復活は、取引先との関係や従業員の雇用を守ることにつながるからです。

例として、以下のような場合が該当します。

  • 業績は悪いが、廃業すると取引先への影響が大きい
  • 後継者がおらず自社では事業を継続できない

何らかの理由で事業の継続が困難な場合でも、資金力が豊富な他社に事業を売却できれば、事業を存続させながら再生・復活に向けた活動ができます。

事業売却2つの方法

次に、事業売却の2つの方法について解説します。

それぞれの方法を確認しておくと、自社に合った方法を選択できるからです。

  • 会社ごと売却する:株式譲渡
  • 事業を売却する:事業譲渡

会社ごと売却する:株式譲渡

ひとつ目は、株式譲渡により会社ごと売却する方法です。

株式を譲渡することで、経営権をも譲れます

経営者として退任を考えていて、会社の経営ごと誰かに任せたいときに使える方法です。

会社の株式を譲ることで、会社の資産含めて全て譲渡することになります。

事業を売却する:事業譲渡

2つ目は、事業譲渡により会社の事業を売却する方法です。

事業譲渡では、譲渡する事業や資産を個別に指定できます。

複数の事業を展開する会社が、事業の取捨選択をしたいときに使える方法です。

事業譲渡を行うと、売りたい事業のみを売却し、自社の経営に必要な事業や資産は残すことができます。

事業売却をおこなうため3ステップ

次に、事業売却をおこなうための3ステップについて解説します。

手順を確認しておくと、スムーズに着手できるからです。

  • 事前準備
  • 買い手のリストアップ・選定
  • 最終合意契約

事前準備

はじめに、事前準備について解説します。

事前準備に必要なことは以下の通りです。

  • 社内検討
  • 売却準備
  • 専門家へ相談

社内検討

まず、事業売却について社内で検討します。

今後の経営方針に大きく影響するので、役員などの経営幹部も含めて熟慮する必要があるからです。

事業売却以外の選択肢や、実際に事業売却する場合の方法・売却先、売却対象とする資産など、さまざまな項目を決定します。

方針をしっかり固めておくためにも、慎重な話し合いが求められます。

売却準備

次に、事業売却のための準備を行います。

あらかじめ準備をしておくと、専門家に相談するときもスムーズだからです。

例えば、以下の項目があげられます。

  • ノンネームシート(社名を公開せずに会社概要を記載したもの)を作成する
  • 取引条件に優先順位をつける
  • 自社の強みをリストアップする
  • 簿外債務の有無を確認する

上記の準備と並行してスケジュールも決めておくと、事業売却に向けた行動に移しやすくなります。

専門家へ相談

次に、M&A仲介会社などの専門家へ相談します。

専門家が売り手と買い手の間で中立的にサポートすることにより、円滑に事業売却を進められるからです。

例えば、税理士法人やM&A仲介会社、銀行などの金融機関があげられます。

専門家に相談すると、売却を検討する事業の業界知識だけでなく、法務や税務などの実用的な部分でもサポートが得られます。

買い手のリストアップ・選定

次に、買い手のリストアップ・選定について解説します。

ここで必要なのは以下の3点です。

  • 候補者のリストアップ
  • 面談の実施
  • 基本合意

候補者のリストアップ

まず、あらかじめ設定した条件をもとに候補者のリストアップを行います。

買い手との交渉が必ずしも成立するとは限らないため、複数の企業と交渉する必要があるからです。

提示した条件にあう会社を複数選んだうえで、社名を明かさずに交渉が可能かどうかを判断します。

交渉が可能と判断した会社の中から、さらに厳選した数社と秘密保持契約を結び、売却する事業の情報を開示します。

面談の実施

次に、売り手と買い手候補のトップ同士で面談を行います。

事業売却の条件を当事者間で確認するためです。

例えば、経営方針や譲渡価格の確認、店舗や工場の視察などがあげられます。

面談終了後、双方が事業売却に前向きであれば、買い手から売り手に意向表明書を提示する場合もあります。

基本合意

両者にM&Aを行う意思がある場合は、基本合意書を締結します。

交渉で合意した条件を再確認し、書面を取り交わすのです。

一般的には、取引形態や譲渡価格、契約予定日などを記載します。

基本合意によって、今後の手続きが円滑に進められます。

最終合意契約

次に、最終合意契約について解説します。

この段階で必要な手順は以下の3点です。

  • デューデリジェンスの実施
  • 最終合意契約を締結
  • 会社の統合作業

デューデリジェンスの実施

基本合意が行われたら、デューデリジェンスを実施します。

デューデリジェンスとは、買い手が第三者の専門家に依頼し、売り手をさまざまな方向から調査することです。

理由としては、最終合意契約の前に、売却価格が適切であるかを確認するためです。

デューデリジェンスでは、M&Aに直接関わる項目はもちろん、過去の契約書の内容や法令遵守についても詳細に確認されます。

売り手が所有する資産価値に加えて、事業の将来性なども含めて売却価格を決定します。

最終合意契約を締結

専門家の調査が完了したら、最終合意契約を締結します。

デューデリジェンスで得た情報を契約書に反映し、M&Aの最終条件が決まるからです。

最終合意契約に向けて、当事者間で売却価格や売却価格の受け取り方、従業員の待遇、契約・引き継ぎのスケジュールを決める必要があります。

最終合意後の条件変更は難しいため、内容を吟味し慎重に判断しましょう。

会社の統合作業

最後に、会社の統合作業を行います。

最終合意契約を基に、売却する事業を買い手の企業に統合しなければならないからです。

具体的には、社内のシステムなどの業務面や、人事制度、従業員の意識を買い手側に合わせていく必要があります。

並行して、事業売却の完結に向けた手続きも行います。

資産の名義変更や譲渡価格の受け取りなど、さまざまな作業を同時に行うので、漏れがないようにチェックしておくと安心です。

事業売却のメリット・デメリット

こちらでは事業売却のメリット・デメリットを解説していきます。

どちらも理解することで、正しい判断がしやすくなるでしょう。

  • 事業売却のメリット
  • 事業売却のデメリット

事業売却のメリット

事業売却のメリットを整理すると以下のとおりです。

  • まとまった資金が得られる
  • 専念したい事業に集中できる
  • 会社や従業員を存続できる
  • 株主総会の特別決議(2/3の賛成)で実行できる

会社ごと売却するわけではないので、会社を持ち続けられるのは、事業売却のメリットといえるでしょう。

事業売却のデメリット

事業売却のデメリットは以下のとおり。

  • 手間がかかる
  • 財務諸表を作り直さなければならないことがある
  • 売却後の事業分野に制限ができる

事業を売却するために、事業ごとの財務表を作らなくてはいけないことや売却した事業を一定期間おこなえないなどの制限があることを頭に入れておきましょう。

事業をできるだけ高く売却する方法3選

事業をできるだけ売却するには以下のような方法が必要です。

  • 法務・財務的に健全な状況である
  • 販路・サービスなどに強みがある
  • 同業他社へ売却する

法務・財務的に健全な状況である

法務・財務的に健全な方が高く売れる可能性があります。

なぜなら見た目の売上がどれだけ上がっていても、コンプライアンスや経営上に問題があれば、買い取った会社のリスクとなるからです。

黒字であればなお良いですが、まずは経営が正しくされていると信頼されることが大切といえるでしょう。

販路・サービスなどに強みがある

販路やサービスに固有の強みがあることも大切です。

ほかの企業が真似できない独自のノウハウや販路があると、金額には出てこない価値といえるでしょう。

今の会社で培ってきた強みをまとめておくことをおすすめします。

同業他社へ売却する

同業他社へ売却するのも、高く売れる可能性が高い方法です。

その理由は、同業他社であれば基盤が既にあることが多いので、多少のコストをかけたとしても、回収できる確率が高いから。

売り手企業様の意向にもよりますが、高く売りたいのであれば、同業他社の買い手を見つけるのもひとつといえるでしょう。

事業売却で気を付けるべきこと3選

事業売却で気を付けることを見ていきましょう。

しっかりとリスクも把握しておかなければ、後で困ったことにもなってしまいます

  • 負債が残る場合がある
  • 税金がかかる
  • 株主の承諾が必要になる場合がある

負債が残る場合がある

事業売却では、株式譲渡と違って、負債が残る可能性があります。

なぜなら、買い手側に債務を引き継ぐ義務がないからです。

事前にどこまで引き継ぐかを決めておかなければ、どちらか一方にとって不利な状況員なる可能性があります。

税金がかかる

税金がかかってしまうのも、事業売却のデメリットです。

譲渡した際の譲渡益が、同年度の売上に上乗せされます。

どのタイミングで売却をするのかも、大切になってくるでしょう。

株主の承諾が必要になる場合がある

事業を売却するためには、株主総会の特別決議が必要になります。

株主が多い場合は手間や時間がかかるので、事前準備が不可欠です。

原則は株主総会の特別決議が必要なことをきちんと覚えておきましょう。

参考記事「事業承継と事業譲渡の違いやそのメリット・デメリットについて解説

まとめ:事業売却の方法は、正しい手順で適切におこなおう

当記事をまとめます。

  • 事業売却とは、会社が営んでいる事業の一部または全部を第三者へ譲渡すること
  • 事業売却のメリット・デメリットを正しく理解しよう
  • 事業を高く売却するには、貴社の強みをしっかりと整理する必要がある

事業を売却する方法は主に2つ。

  • 株式譲渡
  • 事業譲渡

とくに一部の事業だけ売却をする「事業譲渡」は、金額の付け方やそのほかの条件をまとめていくのが大変です。

信頼できる専門家と相談しながら、失敗のないよう進めていくことが大切といえるでしょう。